研究課題
特別研究員奨励費
遺伝子発現を後天的に制御するために、核内ではクロマチンの空間配置や動態が制御されている。これらの機構は細胞の発生や癌化などと関連性があることが示唆されておりその重要性が明らかになってきたが、分子機構はほとんど不明で詳細な分子メカニズムの解明が期待されている。代表者はアクチンファミリーのArp6とミオシンファミリーのNM1が協調してこのメカニズムに関与していると考え、研究を開始した。Arp6KOやノックダウンでNM1の局在に大きな変化は観察されなかったので、次に、Arp6とNM1の結合の変化を解析した。まずRNA Polymerase I(PolI)の転写を抗がん剤であるactinomycin Dによって停止させるとArp6とNM1の結合が減少することが示された。また、rDNAの転写抑制がおこるグルコース飢餓状態でも同様に結合が減少することが示唆された。rDNAの転写抑制時にArp6とNM1が核小体から抜けていることを考えると、rDNAの転写が抑制されるとArp6とNM1は解離し、核小体から消失するというモデルが考えられる。これまでの報告からNMIのATPase活性がPolIの転写活性を正に制御していることが見出されている(Ye J et al., 2008)。そこでATPを加えた状態でArp6とNM1の結合変化を観察すると、Arp6はATPの存在下では、NM1から解離することがわかった。従来、ミオシンファミリーのタンパク質は、それ自身が持つATPase活性によりエネルギーを得てモータータンパク質としてアクチン繊維と相互作用しながら機能している。このような背景と本研究により得られた結果より、Arp6がNM1のATPase活性を制御してrDNAの転写を調節していると考えられた。これまで核内のNMIがどのように制御されているかは、不明であったが本研究により、Arp6によるNM1の機能制御機構モデルを示せたことで有意義な結果を得られた。
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Journal of Cell Science
巻: 125 ページ: 3739-3743
10.1242/jcs.103903
Jounral of Cell Science
巻: (未定)(in press)
Nucleic Acid Research
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