研究課題
特別研究員奨励費
腫瘍から生体を防御する免疫系において、細胞表面レセプター群が異物認識の最前線にあたることから、免疫系の機能制御にはこのリガンド分子認識機構の理解が欠かせない。これが解明され、疾患の発症機序が解明さることで、ワクチン療法と自己反応性T細胞や制御性T細胞を標的とした治療・発症予防への応用が可能となる。HLAは細胞膜上に存在する蛋白質で、抗原提示という免疫の初期ステップに重要な役割を果たしている。HLAに生じる人種差は、その病態とタイプを比較することで、より疾患特異的な分子構造の解析に繋げることが可能で、最終的に副作用の少ない分子標的治療薬の開発に繋がる。本年度は、HLA関連疾患の研究で世界的に有名な、Oxford大学P. Bowness教授の協力を得て研究を遂行した。私と共同研究者は、KIR3DL2CD3εを発現させたJurkutT細胞を作製し、このレポーター細胞がB27ダイマーを発現する細胞において、他のHLAクラス1細胞と比較し、IL2発現が亢進することを明らかにした。この相互作用は、KIR3DL2とB27ダイマーの結合を阻害する各種抗体やレコンビナント蛋白で抑制された。更に、この相互作用が炎症サイトカインの発現にいかに影響を及ぼすかを検討した。また、KIR3DL2陽性CD4^+T細胞ではIL17が過剰に発現することを明らかにした。これら炎症性物質の産生が病態惹起に繋がると考えられるので、B27ダイマーがKIR3DL2に結合するのを阻害する抗体の開発は治療薬として応用可能であると考えられる上、免疫破綻に関わる各種疾患の治療薬としても応用可能であると考えられる。私と共同研究者は既にB27ダイマーとKIR3DL2蛋白を独自に作りだす技術を開発した。今後、免疫細胞における各種HLAクラス1との結合機構について解明することで、この抗体を新しい治療薬開発へと応用できると考えている。
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