研究課題/領域番号 |
10J06108
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
病態医化学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
山嵜 瞬 東北大学, 大学院・医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2012年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | エリスロポエチン / トランスジェニックマウス / 大腸菌人工染色体 / 腎臓 / Creリコンビナーゼ / 腎性貧血 / HIF |
研究概要 |
エリスロポエチン(Epo)は赤血球の産生量を調節するホルモンとして分泌され、低酸素環境や貧血状態ではその分泌が亢進することで組織への酸素供給が維持される。成体における主なEpo産生臓器は腎臓であるが、腎内Epo産生細胞(REP細胞)についての解析は進んでいない。本研究では、Epo遺伝子周辺180-kbを含む大腸菌人工染色体(BAC)を用いて、Epo産生細胞特異的にCre組換え酵素を発現するトランスジェニックマウス(Epo-Cre)を作成し、REP細胞における低酸素応答能の分子機構および腎性貧血発症との関連を明らかにすることを目的とした。昨年度までに、Epo-Creマウスを3系統樹立し、組換えが起きた細胞で赤色蛍光タンパク質を発現するROSA26-tdTomatoマウスとの交配により、REP細胞を永久標識することに成功した。本年度は、新規に樹立した慢性重度貧血マウス(ISAM)を組合せた解析により、皮質から髄質外層までの間質領域における、ほぼ全ての線維芽細胞がREP細胞としての性質を持つことを明らかにした。この結果は、従来までのEpo産生能は一部の間質線維芽細胞に限定されるという概念に反し、腎内の間質線維芽細胞全体にEpoを産生する潜在能が備わることを示した。また、蛍光標識されたREP細胞を単離して遺伝子発現解析を行った結果、低酸素誘導性遺伝子群の発現活性化に加えて、神経系の解糖系酵素を発現することを見出した。これは、REP細胞が神経様の性質を持つことを示唆する以前の我々のグループの報告を裏付ける知見を得た。さらに、慢性腎臓病により線維化が進行した際のREP細胞の挙動については解析が進んでいないことから、一側尿管結紮術による線維化モデルを用いてREP細胞の追跡実験を行った。その結果、腎障害に伴いREP細胞は筋線維芽細胞へ急速に形質転換してEpo産生能を消失すること、さらに皮質全体の線維化はREP細胞由来の筋線維芽細胞で形成されることを明らかにした。これらの結果は、腎線維化に伴い腎性貧血が発症する機序を解明しただけでなく、REP細胞の保護が慢性腎臓病の有効な治療標的となることを示唆するものであった。
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