研究課題/領域番号 |
10J06281
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
感性情報学・ソフトコンピューティング
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高口 太朗 東京大学, 大学院・情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2012年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | テンポラル・ネットワーク / 社会ネットワーク / データ解析 / 意見形成ダイナミクス / ネットワーク / べき分布 |
研究概要 |
本年度は、時間依存ネットワークを構成する個々の接触イベントの重要度指標について研究を行い、その成果を海外論文誌に発表し、国内外の学会において研究発表を行った。従来の静的な社会ネットワーク構造の研究において、ネットワークを構成する個々のノードやリンクの重要度(中心性)を定量的に測ることは、基礎理論と応用の両面から盛んに研究がなされてきた。一方で、現実の対象ではネットワーク構造は時間的に不変ではなく、ノードの状態変化と結合構造の変化とが相互作用する、時間依存のネットワークである。近年のセンシング技術の発達などにより、人同士のコミュニケーション行動を高い精度で観測し、動的な時間依存ネットワークとして記録することが可能となってきた。時間依存ネットワークにおいて時間的に変化するノードやリンクの中心性を測ることは、ネットワークの形成過程やその上でのダイナミクスを理解する上で重要である。そこで本年度の研究では、時間依存ネットワークにおいて個々の接触イベントの中心性を提案した。これは、リンクの時間依存の中心性と解釈できる。提案手法では、接触イベントに関わる2ノードにイベントを通じてもたらされる情報の量をそのイベントの中心性と定義した。ここでの情報とは、接触イベントの意味的内容ではない。その代わりに、各ノードは他のノードそれぞれについて接触イベントをさかのぼって到達できる最新時刻を、そのノードの最新状態として記憶していると仮定し、他のノードの最新状態としてより新しい時点の状態を知ることを新たな情報を得たとみなす。提案するイベントの中心性を実測データに適用し、その性質を調べた。その結果、まずイベントの中心性はイベントごとに幅広く分布していることが明らかとなった。これは、大多数のイベントは重要度が低く、ごく少数のイベントが重要度が高いことを意味する。次に、もとの実測データから重要度の高い一部のイベントを取り除くとネットワーク全体としての連結性が失われるが、逆に重要度の低い大部分のイベントを取り除いても全体の連結性にはほとんど影響を及ぼさないことが判った。このことは、提案するイベントの中心性か"、ネットワークの連結性への寄与という意味で適切に機能することを意味する。さらに、実測データの示す重要度の低いイベントの除去に対する頑健性が、主に行動パターンのバースト性(行動時間間隔のロングテール性)に起因することを、実データのランダム化分析と力学的モデルに基づく検証により明らかにした。
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