研究課題/領域番号 |
10J06310
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
ヨーロッパ文学(英文学を除く)
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
加藤 哲平 同志社大学, 神学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2012年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | ユダヤ教 / キリスト教 / ヒエロニュムス / 聖書 / 翻訳 / 七十人訳 / ウルガータ聖書 / キケロー / ラビ文学 / 教父文学 / 七十人訳聖書 |
研究概要 |
1、最終年度である本年度の目標は、これまでに継続してきた資料の精読から得られた研究結果を、口頭・論文発表していくことである。本研究の大枠のテーマである、ユダヤ学者とキリスト教学者との立場の違いや、そうした研究者たちの立場を二分することになるヒエロニュムスのヘブライ語能力の有無ついては、昨年度までに論文として発表した。そこで本年度は、後者の議論で注目した点(なぜ彼は福音書記者による誤訳は正当化し、七十人訳者の語訳のみを非難するのか)について考察し、海外ジャーナルに英語で発表した(Vigiliae Christianae 67 [Leiden:Brill,2013】,forthcoming)。報告者が明らかにしたヒエロニュムスの見解は以下の通り。第一に、七十人訳者が翻訳の依頼主に配慮して、ギリシア哲学の用語で聖書を翻訳したため、七十人訳は翻訳としての精度が低い。第二に、ヘブライ語聖書の原文にはイエスの到来が記されているが、到来以前にそれを「預言」として訳した七十人訳者と、到来以後にそれを「歴史」として知りつつ訳した福音書記者とでは、情報の精度が後者の方が上である。ゆえに翻訳者として優れているのは福音書記者である。ヒエロニュムスはこうした神学上の議論を、ヘブライ語の文法説明を含む文献上の証拠から裏付けているので、彼のヘブライ語能力は信用できる。2、以上の考察から、ヒエロニュムスと聖書との関係を考えるうえで、「翻訳」というキーワードが重要なものとなってきた。そこで次の段階として、学際分野である翻訳学(Translation Studies)の歴史的研究の成果を援用しつつ、報告者はヒエロニュムスの翻訳論の特徴を明らかにした(『翻訳研究への招待』第9号、掲載予定)。ここでは特にキケローとの対比において、意訳と逐語訳とに対するヒエロニュムスの態度を吟味した。その結果、意訳を重視したキケローの強い影響下にありながらも、ヒエロニュムスの翻訳論は、特に聖書の逐語訳について、彼独自のものであること語明らかになった。3、これらの議論については、専門的な論文発表だけではなく、講演会などアウトリーチ活動の中で分かりやすく発信することにも努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の進展に伴って、当初の計画にはなかった「翻訳」というキーワードが浮上してきたから。「翻訳」を軸にヒエロニュムスについて論じることで、単なる古代のユダヤ教・キリスト教研究の枠組みを超えて、現代の翻訳学の中で論じられている問題をこちらが参照することができる。同時に、見過ごされるかことの多い古代の翻訳論を、現代の翻訳学研究者たちに提供することができる。
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今後の研究の推進方策 |
ヒエロニュムスの翻訳論との比較対象として、キケローを論じたが、今度は数多くされてきている聖書翻訳史の中で、アクィラ、シュンマコス、テオドティオンら七十人訳の改訂翻訳、またペシッタやタルグムといった異なる文化圏での古代聖書翻訳との比較をしていきたい。
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