研究課題
特別研究員奨励費
ガンビエル酸類は食中毒シガテラの原因渦鞭毛藻Gambierdiscus toxicusから単離された巨大ポリエーテル天然物であり、非常に強力な抗真菌活性と中程度の細胞増殖抑制活性を有することが明らかにされている。しかし、天然からの試料入手が困難な微量成分であるため、その作用機構や活性発現に必要な構造、その他の生物活性については未だに未解明である。前年度は、鈴木一宮浦反応を基盤とし、ガンビエル酸Aの全合成を達成し、絶対立体配置を含む全立体構造を決定した。本年度は、前年度確立したガンビエル酸Aの全合成ルートを派生させ、合成中間体から数種の人工構造類縁体を合成した。さらに、ガンビエル酸A及びこれら類縁体の黒カビAspergillus nigerに対する抗真菌活性試験とP388マウス白血病細胞に対する細胞増殖阻害試験を行い、構造活性相関に関する知見を得ることを試みた。その結果、抗真菌活性については、C1位カルボン酸の存在と分子右側のJ環側鎖の長さが活性発現に重要なことが明らかになった。また、細胞増殖阻害活性については、J環側鎖が抗真菌活性と同様に活性発現に必要な構造である一方、C1位カルボン酸をメチルエステルにしても活性が保持されることがわかった。さらに、細胞増殖阻害活性について、J環側鎖の骨格の立体構造が活性発現に影響を与えていることが明らかとなった。抗真菌活性と細胞増殖阻害との間で構造活性相関に違いがあったことから、それぞれの活性の発現機構および標的分子が異なることが示唆された。
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