研究概要 |
ARA6は,ユニークな構造的特徴を持った植物特異的なRAB5メンバーであり,陸上植物に広く保存されている.このことから,ARA6は植物特異的な膜交通経路において機能していると思われ,シロイヌナズナを用いた先行研究では,ARA6はエンドソームから細胞膜への輸送を制御し,環境ストレス耐性に重要な役割を有していることが明らかとなっている.本研究では,ARA6機能の陸上植物における多様性についての知見を得るため,陸上植物の基部に位置するコケ植物におけるRAB5グループの機能解析を進めている. 1.ゼニゴケARA6(MpARA6)ノックアウト株の表現型解析 MpARA6の関与する膜交通経路の生理的機能を明らかにするため,相同組換えによるMpARA6破壊株を作製し,その表現型を解析した.その結果,浸透圧ストレスや塩ストレス条件下で植物体の形態異常や葉緑体の発達異常が見られた.このことから,MpARA6はシロイヌナズナのARA6同様,非生物ストレス耐性に関わっていることが示唆された. 2.MpARA6の関与する膜交通経路の探索 GTP固定型MpARA6のXFP融合体を過剰発現し,MpARA6の関与する膜交通経路の最終到達点を歌詞化したところ,葉緑体外胞膜と連続した膜構造に局在した.電子顕微鏡による解析により,この膜構造は外胞膜のみで構成されており,ストロにミュールとは異なる構造体であることが明らかとなった.異常のことより,MpARA6は葉緑体外包膜への輸送経路ではたらいていることが示唆された. これらのことより,シロイヌナズナとゼニゴケにおいてARA6は類似の生理的機能を持ちながら,膜交通レベルでは異なる経路で機能していることが示唆された.また,これまで膜交通システムとは独立のものと考えられていた葉緑体への物質輸送に膜交通システムが関与していることが示唆された.
|