研究概要 |
鉄鋼材料では,高強度・高靱性の鋼板を作成するためにベイナイト組織が注目を浴びている.ベイナイト鋼の強度や靱性を決定するのは,ブロック・パケットなどの結晶粒径や,セメンタイト・MAなどの第二相組織である.現在,ベイナイト組織を得るために様々な元素添加がされているが,元素添加が結品粒径や第二相組織に与える影響は明らかでない.そこで本年度では元素添加がベイナイト組織に与える影響を明らかにする. Fe-0.15C-1.5Mn-0.05SiにB,Nb,Nb+Bを微l量添加した合金を用い,等温変態時の変態速度・変態組織に対する元素添加の影響・連続冷却時の組織形成について調査した.ベイナイト変態開始は元素添加を行なうとNb,B,Nb+B添加の順に変態開始が遅延する.また,Nb添加によって変態停留が現われる.不完全変態が発現する場合,変態停留が発現するまでは方位差が小さいベイニティックフェライト(BF)が生成する.変態再開後では,オーステナイト(γ)は転位密度が低い方位関係を持った方位差の小さなフェライトに分解しやすいが,方位差の大きなBF間のγはフェライトあるいはパーライトにも変態することが明らかになった、さらに,連続冷却時の細織形成に及ぼす元素添加の影響については,等温変態と同様の順に変態開始が遅延し,元素添加によって,より低温で生成する組織が生成するようになる.また,MAはNb添加によって生成量が増加し,その形状は周囲のBFの結晶学的特徴に影響を受ける」連続冷却では変態組織が粒界・粒内など場所により異なり,粒界近傍に炭化物析出を伴わないBFが粗大なベイナイトが高温で生成し,粒内ではセメンタイト析出を伴うBFが微細なベイナイトが低温で生成する.MAとして残留しやすい粗大BF間の微細な・中の炭素濃度は,変態停留中のγの炭素濃度であるTOに対して100J/molの過冷度を考慮した組成を外挿した値に近く,連続冷却変態におけるMA生成機構と等温変態での不完全変態機構は密接に関係することが明らかになった.
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