研究課題
特別研究員奨励費
平成23年度には、ネフェリン担体およびアルカリ炭酸塩触媒のカーボン酸化メカニズムの解明を行った。本系では、水洗浄耐性に優れた炭酸種が存在することがわかっている。既往の研究では、アルカリ系は高い移動性、すなわち揮発や低融点化合物の形成により高活性が発現するとされている。また、反応後に炭酸種の残留が確認できることから、炭酸種が何らかの形で反応に寄与していると考察されている。さらに、炭酸種の分解が必須とも考察されている。まず本系でのアルカリの移動性について検討し、さらに活性化エネルギー算出、酸素種推定、表面分析のための実験を行い、得られた実験結果をもとに活性サイトおよび反応経路を考察した。まず、通常の透過法と比してより詳細な表面の情報が得られる拡散反射フーリエ変換赤外分光法により、炭酸塩がカーボンあるいは酸素への電子供与体である可能性が示された。また、見かけの活性化エネルギーは、活性種が炭酸ナトリウムと炭酸カリウムの複合炭酸塩であることを示唆する。すす酸化触媒として一部実用されている銀とセリアの混合物からなる触媒は、固固反応によりすす酸化を行うとされている。カーボン酸化活性評価の結果、銀セリアの混合物はネフェリン担体およびアルカリ炭酸塩触媒とは大きく異なる燃焼反応挙動を示すことがわかった。さらに、ネフェリン担体およびアルカリ炭酸塩の系はカーボンと触媒との接触が良好でなくとも高い活性を示すことがわかっており、これは固気反応が進行していることを示唆している。不活性雰囲気下で触媒試験を行った結果、実用されているPt/CeO2-ZrO2およびカリウムをドープした酸化コバルトでは格子酸素による酸化が見られるが、本系では酸化能がないことがわかった。また、13C同位体を含む炭酸カリウムを用いた触媒活性評価の結果、触媒反応中炭酸イオンは遊離しないことが示唆された。以上の実験結果より、ネフェリン担体に安定に保持された炭酸塩のカーボン酸化反応のモデルを以下のように提案した。このモデルは4つの過程から成り、(1)非局在化している炭酸イオンの電子がナトリウムに移動し、(2)電子を過剰にもったナトリウムが気相の02分子に電子を与え、(3)02-を形成しカーボンを攻撃、(4)カーボンは02-によってCO2-となり、電子を炭酸イオンに与えてCO2となり脱離することで触媒サイクルを完成した。以上の研究成果より、アルカリ炭酸塩を用いると、ディーゼルすす燃焼において排ガス平均温度帯で有効な触媒を調製可能であることがわかった。さらに活性の高い触媒を得るためには、より活性の高いアルカリ炭酸塩を表面に出現させること、カーボン酸化反応の律速となる経路を促進させること、が考えられる。また、アルカリを助触媒や添加剤として用いることも提案し、これらの知見は貴金属フリー自動車触媒の開発につながると期待される。
すべて 2012 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) 図書 (1件)
Microporous and Mesoporous Materials
巻: (掲載確定)
Bulletin of the Chemical Society of Japan
巻: (印刷中) 号: 4 ページ: 527-532
10.1246/bcsj.20110384
10030544157
The Journal of Physical Chemistry C
巻: 115 号: 30 ページ: 14892-14898
10.1021/jp2034664