研究課題
特別研究員奨励費
前年度までの研究により明らかとなった、ヤリイカ類における精子の形態・生理・行動にみられる様々な二型は、輸卵管内部、口部貯精嚢周辺という全く異なる環境に精子を受け渡す繁殖生態によって生じたと考えられる。輸卵管内部の精子は卵が輸卵管を通過して行く際に体内受精を、貯精嚢周辺の精子は産卵時に体外授精をしている可能性が高い。しかし、ヤリイカを含め、輸卵管から遠く離れた口部に貯精嚢を持つ頭足類において、実際に貯精嚢内部とその周辺にある精子がどのように授精に用いられるのか検証した例はこれまで無い。そこで小型で飼育実験が容易なヒメイカを用いて、貯精嚢精子の授精方法を検証した。ヒメイカはヤリイカのスニーカーと同様に、貯精嚢周辺に精子を受け渡す交接を行うが、輸卵管に精子を渡す交接行動は行わないので、貯精嚢精子の挙動を観察しやすい。飼育下で産卵行動を観察した結果、産卵の際、ゼリーにくるまれた卵を腕で基質に押し付ける行動が観察され、その際に腕の付け根にある貯精嚢の部分を押し付けていることが明らかになった。さらに産み出された卵とその周りのゼリー層を丸ごと核染色することにより、卵周辺の精子の分布を観察した。その結果、卵ゼリー層は玉葱のような層構造を持ち、玉葱の芽部位に位置する煙突状の入り口付近から中央部に多く精子が分布することが明らかになった。以上より、雌は産卵の際に、卵ゼリー層内に貯精嚢内の精子を能動的に注入し、卵を授精させていることが示唆された。また、ヤリイカに見られる精子二型に関して、異なる専門分野の研究者と積極的に共同研究を行い、生理的な差異(運動性・寿命や代謝経路)の検証や、精巣の遺伝子発現と精子のタンパク質の比較解析など、多方面から二型分化の至近要因を探るアプローチを行った。
(抄録なし)
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Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: (印刷中)
Current Biology
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Communicative & Integrative Biology
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Conservation Genetics Resources
巻: In press(掲載確定)
Fisheries Research
巻: 102 ページ: 286-290
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