研究課題
特別研究員奨励費
前年度までに、レチノイド受容体作動薬であるAm80が一酸化窒素(NO)/cGMPシグナル経路を駆動してドパミンニューロン保護効果をもたらすことを見出した。本年度は、Am80 の神経保護効果に、新規NOシグナル関連分子である8-nitro-cGMPの産生を介したシグナル経路の動員が関与する可能性について、タンパク質のS-グアニル化修飾に着目して検討した。ヒト神経芽細胞腫であるSH-SY5Y細胞、胎仔ラット脳より調製した中脳ニューロンの初代培養系および、新生仔ラット脳より調製した中脳-線条体組織切片共培養系を用いて検討した結果、Am80はドパミンニューロンにおいて8-nitro-cGMPの産生を増大し、タンパク質のS-グアニル化レベルを亢進させ、その効果はNO/cGMPシグナル阻害薬との併用あるいは、神経型NO合成酵素(nNOS)のノックダウンによって顕著に抑制された。さらに質量分析の結果、S-グアニル化を受ける標的分子として、細胞骨格である微小管を構成するタンパク質であるβ3-tubulinを同定した。そこで微小管の動態に着目して検討した結果、Am80は微小管の重合レベルを亢進し、その効果はNO/cGMPシグナル阻害薬との併用あるいは、nNOSのノックダウンによって抑制された。加えて、Am80あるいは8-nitro-cGMPが、ドパミン神経毒であるMPP+による傷害性からドパミンニューロンを保護することも見出した。以上の結果から、Am80は8-nitro-cGMPの産生を介したシグナル経路を動員し、β3-tubulinのS-グアニル化を介した微小管安定化作用によって、ドパミンニューロンを保護することが示唆された。
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British Journal of Pharmacology
巻: (in press) 号: 3 ページ: 1151-1168
10.1111/j.1476-5381.2012.01833.x
Journal of Neurochemistry
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