研究課題/領域番号 |
10J07835
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
数理物理・物性基礎(理論)
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 貴司 東京大学, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2010 – 2013-03-31
|
研究課題ステータス |
採択後辞退 (2012年度)
|
配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2012年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
|
キーワード | 統計力学 / 長距離相互作用 / 量子開放系 / 平均場理論 |
研究概要 |
今年度は長距離相互作用系についての研究を平衡状態とダイナミクスの両方の観点から進め、また、量子系が緩和する現象をLiouville演算子の固有値問題という観点から調べた。古典スピン系の長距離相互作用系の平衡状態の研究として、昨年度にカノニカル分布について得られた結果がミクロカノニカル分布に対してどのように拡張されるかを調べ、さらにこれらの研究を量子スピン系に拡張した。具体的には、ミクロカノニカル分布でエントロピーを長距離相互作用系に対して計算して求めたとき、それが平均場理論によって計算されるエントロピーと厳密に一致するかどうかを調べた。その結果、基本的には平均場理論はミクロカノニカル分布の場合にも厳密に正当化されるが、ある条件が満たされるときには平均場理論のエントロピーとずれるパラメター領域が存在することが明らかとなった。その条件は、同じモデルをカノニカル分布で扱って温度を変化させたときに1次相転移が存在するかどうかと密接な関係がある。 昨年度はカノニカル分布で長距離相互作用系を扱った。その結果によると、磁化を固定したときのカノニカル分布で平均場理論の結果が厳密でなくなる条件は、磁化を固定せず、磁場を動かしたときに1次相転移が生じるかどうかと密接に関係していた。今年度の結果と合わせると、より一般的な結論に自然に導かれる。すなわち、長距離相互作用系で、ある物理量を固定したときに平均場理論とは異なる平衡状態が実現するときには、その物理量を固定せず、それと共役な外場を動かしたときに1次相転移が必ず生じる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長距離相互作用系についての研究で、ミクロカノニカル分布や、磁化を制限したカノニカル分布で長距離相互作用系を扱うと、平均場理論では記述できない平衡状態が現れることが予言され、そこからより一般的な結論、すなわち、保存量があるときにはそれと共役な外場を動かしたときに1次転移を起こす系で平均場理論で記述できない状態が現れるということが明らかとなった。さらに、これらの結果が量子スピン系においても成立することが証明された。長距離相互作用系は通常理論的に扱いが難しいことを考えると、これらの一連の厳密な結果が得られたことは、本研究が順調に進展していることを示している。
|
今後の研究の推進方策 |
長距離相互作用系の平衡状態については理解が深まった。したがって、これからは非平衡ダイナミクスに長距離相互作用がどのような顕著な効果をもたらすかを調べることが課題となる。また、本来短距離相互作用しか持たない系が、一部の自由度のみに注目するとあたかも長距離相互作用が生じているように見えるモデルが数値計算で確認されているため、どのような条件の下でこのようなことが起こるかを理解することによって、長距離相互作用系の実験的実現を提案したい。
|