研究課題
特別研究員奨励費
都賀庭鐘の読書筆記『過目抄』および『呉服文織時代三国志』などの作品を精読し注釈ノートの作成作業を行いつつ、並行して彼の作品を日本(語)と中国(語)の往還という側面から捉え、「越境」のテーマから読み解くことを試みた。そのための理論的枠組の構築をめざし、今年度は江戸文学に限定せず幅広く様々な地域・ジャンルの作家・作品に対象を広げて読解を進めた。そのうち学会・研究会での口頭発表に至ったものには、マレーシア出身・台湾在住の中国語作家、張貴興の作品に見られる華語とダヤク語の世界の往還及び、ボルネオの地における華人の家族史の寓話についての書評と、近年の日本映画を対象に非母語での演技を論じた「Exophonic Movies? Japanese Language in Films of 2000-2010」がある。これらの現代作品で創作言語がどのように選択されているか、さらに非母語の使用と母語との往還がもたらす意味を考察することを通じ、庭鐘の作品を読解するにあたっての一つの参照点が見出された。また、『四鳴蝉』『呉服文織時代三国志』に見られる庭鐘の中国演劇への関心に着目し、2012年3月には長崎にて長崎歴史博物館・県立図書館等の施設を訪問し、当時の日本における中国演劇の受容に関する資料の調査を行った。テキストとしての戯曲の輸入ではなく、唐人屋敷をはじめとする場所における実際の上演状況を調査することが目的であったが、初回のため資料の内容の精査には至らなかった。これを踏まえ、今後は今回の調査で訪問できなかった長崎市内以外の機関も含め再調査を計画している。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)
跨海的東亞現代文學:漂泊・流亡・留學:第八届東亞現代中文文學國際學術研討會論文集
巻: 横濱號(2010) ページ: 256-271
中国俗文学研究
巻: 21 ページ: 70-99
Migrations, Mobility and Globalization Proceedings of the postgraduate papers
ページ: 49-58
Giappone e Italia : le arti del dialogo
ページ: 91-101