研究課題
特別研究員奨励費
細胞内で蛍光変化を検出するために、より効率のよい蛍光回復を示す化合物を目指し、蛍光団とTEMPOの数と結合位置の異なる4種類の化合物を合成した。これらの化合物について100μMアスコルビン酸添加による蛍光上昇とESRシグナル強度の変化について調べた。その結果、TEMPOがリンカーを介して離れて結合しているHoTでは最も蛍光上昇は小さく、TEMPOを2つ有するT-BI2-Tでは最も大きく約4.8倍の蛍光上昇を示した。このT-BI2-Tについて細胞内イメージングを行った。T-BI2-Tの細胞内分布は核染色試薬SYTO Green 11と一致したことから、核への局在が示された。T-BI2-Tが核に分布することが確認されたので、次に酸化ストレスのイメージングを行った。マウスマクロファージ由来のRAW264.7細胞を50μM T-BI2-Tで3時間処理し、洗浄した後に過酸化水素水溶液を100μMとなるように添加し、その前後での蛍光変化を観察した。画像処理ソフトImageJを用いてそれぞれの細胞の平均輝度を求め、その中央値を求めたところ、過酸化水素を添加した場合では顕著な輝度中央値の上昇、つまり蛍光強度の上昇が見られた。細胞をアスコルビン酸で前処理し過酸化水素を消去することで、この蛍光上昇は完全に抑制されたことから、T-BI2-Tが過酸化水素添加によって引き起こされた細胞内のレドックス変化に応答して蛍光変化を起こしていることが示唆された。以上、本研究では核に局在し、かつ酸化還元状態の変化に応答して蛍光変化を起こす分子を設計・合成し、T-BI2-Tを見出した。この化合物は細胞での蛍光イメージングが可能であるだけでなく、生体レベルでもESRイメージング技術を用いることで可視化することができると考えられ、広い分野で応用可能なプローブとなると期待される。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) 備考 (2件)
Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters
巻: 22 号: 5 ページ: 1949-1952
10.1016/j.bmcl.2012.01.042
Free Radical Biology and Medicine
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http://www.phar.nagoya-cu.ac.jp/hp/ykg/Yakka/index.html