研究課題/領域番号 |
10J08123
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
機能生物化学
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
大黒 亜美 関西学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 可溶性エポキシドヒドロラーゼ / リゾホスファチジン酸 / 糖尿病 / 細胞増殖 / EET |
研究概要 |
soluble epoxide hydrolase(sEH)はエポキシドヒドロラーゼ活性(EH活性)と脱リン酸化活性を持つ酵素である。脱リン酸化活性の基質や機能は明らかではないが、EH活性の基質はエポキシエイコサトリエン酸(EET)である。EETは、血管拡張作用や抗炎症作用、血液線溶作用などを持つ生理活性物質であり、近年、血管新生作用も着目されている。血管新生は、発生過程における循環器系形成や、癌の増殖や糖尿病性網膜症といった病態にも関与している。sEHはEETを加水分解することでこれらの作用を不活化すると考えられている。本年度は、糖尿病や癌におけるsEHの生理機能を明らかにするため、以下の二つの項目について研究を行った。1.高グルコースによるsEH減少メカニズムの解明については、高グルコースによって増加した活性酸素により転写因子Sp1の核内量が増加し、sEH遺伝子上流域に結合することでその転写を抑制していることを明らかにした。2.sEHの脱リン酸化活性の基質探索においては、精製sEHと合成基質である4-MUPを用いた脱リン酸化活性阻害による基質スクリーニング系を用いた。その結果、リゾホスファチジン酸(LPA)がsEHの基質となることを明らかにした。また他のリン脂質であるスフィンゴシン-1-リン酸やホスファチジン酸などに対しては低い活性しか示さなかったことから、sEHはLPA特異的に高い活性を持つことが示された。本研究により、sEHの新たな抑制機構が明らかとなり、これによりsEHの基質の生理作用が増加すると考えられる。またsEHによるLPA代謝は、EH活性によるEET代謝に加えて新たな生理機能が予想される。LPAは細胞外から細胞膜受容体を介して働くことが知られているが、近年では細胞内における作用も報告されていることから、新たな細胞内LPA代謝酵素としてsEHの役割が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高グルコースによるsEHの減少メカニズムの解析については、高グルコース状態でのSp1を介した抑制機構を明らかにすることができたが、sEHプロモーターのベースの活性にもGC-rich領域が関与しているデータが得られており、これらとSp1の関わりを十分に明らかにすることができていない。一方、sEHの脱リン酸化活性の基質については、計画通りLPAをその基質として同定することができ、高い活性を持つことが示された。しかし内在性LPAが実際にsEHによって代謝されているのか、また他により親和性が高い基質が存在するかをさらに検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
高グルコースによるsEH減少メカニズムについては、sEHのGC-rich領域に結合し、ベースの活性に関わる転写因子の同定を行う。またこの因子とSp1が競合しているかなど、Sp1との相互作用について詳しい解析を行う。sEHの脱リン酸化活性の基質探索においては、sEHノックダウン細胞を用いて内在性LPAが増加しているかどうかをLC-MSを用いて定量する。また本研究により、脂肪酸はsEHの4-MUPに対する脱リン酸化活性において強力な阻害剤として働くが、LPAに対する活性は阻害しないことを見出した。よって4-MUPを用いた基質スクリーニング系では脂肪酸による活性阻害を検出してしまうことから、基質をLPAに変更し、さらなる親和性の高い内在性基質をスクリーニングできるアッセイ系を検討する必要があると考えられる。
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