研究課題/領域番号 |
10J08349
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
分子生物学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 明格 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | Tob2 / 脂肪細胞分化 / 肥満 / PPARγ / BMP / 白色脂肪組織 / 脂肪組織 / マイクロアレイ / 糖・脂質代謝 / 分子標的薬 / 生活習慣病 |
研究概要 |
近年、過栄養の環境が生じやすい経済的先進国において、肥満は急激に増加している。肥満は糖尿病・高血圧・高脂血症等の生活習慣病の発症と進行に深く関与し、その対策は予防医学上重要な課題である。しかし、肥満症に有効な薬は限られており、新たな標的の探索、薬の開発は急務である。肥満は体内脂肪組織の重量が増加した状態であり、脂肪細胞の増殖や分化機構と密接に関連するため、これら分子機構の解明は創薬に直結するものと考えられる。これまでの成果として、脂肪前駆細胞3T3-L1細胞・初代培養脂肪前駆細胞を用いた実験により、Tob2が脂肪細胞分化を抑制制御することを示した。また、Tob2 KOマウスにおいて白色脂肪組織重量の増加が見られた。この結果は、Tob2が脂肪細胞分化を抑制するというin vitroの実験結果とも一致しており、Tob2は特に脂肪組織形成、脂肪細胞分化に重要な役割を担っていることが示された。脂肪細胞分化の分子基盤は多くの知見が得られている。なかでも、転写因子PPARγとC/EBPファミリーは必須因子である。そこで、Tob2がどの転写因子の発現を制御しているか調べたところ、PPARγの発現量を転写レベルで制御していることが分かった。Tob/BTGファミリーは抗増殖因子として広く知られる一方で、BMPシグナル経路の阻害因子であることも知られている。脂肪細胞分化・脂肪組織形成にはBMPシグナル経路を介したPPARγの制御が重要な役割を担うため、続いて、脂肪細胞分化過程において、Tob2がBMPシグナル経路に与える影響を調べた。この結果、Tob2は脂肪細胞分化過程で活性化されるBMPシグナルを抑制することが明らかとなった。BMP/Tob2による脂肪細胞分化・脂肪組織形成の精密な分子基盤を明らかとした本成果は、抗肥満薬の新規分子標的となることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、脂肪細胞分化過程に関与する分子の探索並びにその分子機構の解明であった。2年間の成果により、Tob2を新規脂肪細胞分化制御因子として同定し、また、その分子基盤として、脂肪細胞分化に重要なBMPシグナル経路の阻害を介していることを見いだした。さらに、当初の計画以上の進展として、個体における白色脂肪組織形成においても、Tob2/BMP経路が重要であることを示した。この成果により、Tob2/BMP経路を標的とした創薬の可能性が大きく広がった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の成果より、Tob2/BMP経路の阻害が新規抗肥満薬の創製に繋がる可能性が示唆された。今後の課題としては、脂肪組織特異的なTob2/BMPシグナル経路の阻害方法の確立である。まず、本経路は、骨芽細胞分化過程にも関与している可能性があり、本経路の阻害による副作用を明らかにすることは必須である。また、既存のドラックデリバリーの手法では、脂肪組織特異的に薬物を移行させる手段は発展途上であり、よりよい手法を考案して行く必要がある。
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