研究概要 |
マウスにおいて造血幹細胞(HSC)およびほとんどの血球系細胞にSpred-1、Spred-2は発現している。幹細胞因子(SCF)などの幹細胞因子のシグナルの負の制御因子であるSpredは白血病発症および幹細胞維持に寄与する可能性が高く,これらを明らかにすることが,本研究の目的である。平成22年度にTie2CreマウスとSpred1-floxマウスを交配し、血球血管特異的Spred1欠損(cKO)マウスを作製した。その結果皮下肥満細胞の数が15倍ほど増加していることを観察した。Spred1欠損BMMCsはIL3,SCFに対する増殖が亢進しており、IgE-Fcεレセプター刺激に対するIL6、TNFα、IL13の産生が亢進していた。これらではERKのリン酸化亢進を認めた。しかしin-vitroのコロニーアッセイではSpred1 cKOマウス由来の骨髄で特にコロニー系性能の増加はみられなかった。Spred2の相補的な影響をみるために本年度はSpred-2KOマウスと交配させてSpred-1(f/f)Spred-2KOマウスの作製を行った。Tie2CreSpred1 cKOSpred2+/-マウスは正常に生まれて来て交配能力もあるが、このマウス同士を交配して得られるSpredlcKOSpred2-/-マウスは非常に数が少なく一部出産早期に死亡している可能性が示唆される。また生存したSpred1 cKOSpred2-/-マウスは正常に発育するものの不妊であり、子孫を残すことができなかった。現在のところその原因は不明である。一方LysMCreマウスを用いてマクロファージ特異的にSpred1を欠損するLysMCre-Spred1 cKOSpred2-/-マウスも作製したがこれまでマクロファージの異常は観察されておらずSpred1,Spred2はマクロファージにおいては重要な機能は果たしていないと考えられた。
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