研究課題
特別研究員奨励費
超伝導の発見から100年以上が経過する今日においても、その機構や性質の解明は未だ完全とは言えない。本研究では特に、強相関電子系における超伝導のペアリング対称性を理論計算に基づき明らかにしてきた。強相関電子系では、複雑な電子相関が様々な機構や性質をもつ超伝導を引き起こすとされていて、その理論的な解明が必須となっている。ペアリング対称性は超伝導の機構や性質を大きく反映したものになっているため、それを理論的に導くことは有益である。平成24年度において本研究では、具体的に以下のような研究を実施し成果を挙げた。【1】交替磁場中の超伝導交替磁場中の超伝導がもつペアリング対称性を、理論計算(Hubbard模型+乱雑位相近似、揺らぎ交換近似)に基づき明らかにした。交替磁場により電子はスピンに依存した密度変調を起こし、電荷揺らぎを増強させる。その結果、実現する超伝導は非従来的なペアリング対称性(奇周波数スピン3重項s波)を持ち得ることが分かった。多層型銅酸化物においては反強磁性と超伝導がCuO_2面ごとに住み分けし得ることが実験に基づき報告されており、本研究で用いた理論模型が適用され得る。【2】空間反転対称性が破れた系における超伝導空間反転対称性が破れた超伝導体で実現するスピン1重項/3重項混合状態の発現機構を、理論計算(拡張Hubbard模型+乱雑位相近似)に基づき明らかにした。空間反転対称性が破れた系では、スピン軌道相互作用の存在によりスピン1重項状態と3重項状態が混合する。本研究によって、その混合状態のペアリング対称性が「ペアリング相互作用」、「スピン軌道相互作用」、「エネルギー分散関係」から微視的にどのように決まるのかが明らかになった。近年続々と発見されている空間反転対称性が破れた超伝導体を理解する上で、重要な役割を果たす。
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Physical Review B
巻: 85 号: 22 ページ: 1-13
10.1103/physrevb.85.224509
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10.7566/jpsj.82.014702
40019545404
巻: (印刷中 未定)