研究課題
特別研究員奨励費
CRYタンパク質は、E-boxを介した時計遺伝子の転写活性化を強力に阻害することにより、概日時計の発振において中枢的な役割を果たす。マウスのCRY2は、557番目のセリン残基(Ser557)のリン酸化に依存してプロテアソーム系を介した分解制御を受ける。本研究は、Ser557をAla置換した変異マウス(S557A-CRY2ノックインマウス)を用い、CRY2のSer557リン酸化の時計発振における役割を解明すると共に、CRYをユビキチン化する新規E3リガーゼの同定を目指した。本年度は、Fbxl3ノックアウトマウスとS557A-CRY2ノックインマウスを交配した二重変異マウスを作製してマウス行動リズムへの影響を調べたが、Fbxl3ノックアウトマウスと二重変異マウスとの間に有意な行動リズム周期の差は観察されなかった。一方、FBXL3の相同タンパク質で機能未知のFBXL21に着目し、FBXL21がCRYをユビキチン化してCRYの安定性を制御する可能性を検証した。Fbxl3/Fbxl21ダブルノックアウトマウスではFbxl3ノックアウトマウスが示す周期長の延長が大きく緩和された。重要なことに、一部のダブルノックァウトマウスは、恒暗条件に移してから数週間のうちに行動リズムが消失するという顕著なリズム異常を示した。マウスの行動実験と並行して生化学的な解析を進め、FBXL3はCRYの分解を促進するのに対して、FBXL21はCRYを安定化することを見出した。さらに、FBXL3がプロテアソーム系分解の標的となるユビキチン鎖をCRYに付加するのに対し、FBXL21は異なるユビキチン鎖を付加することを明らかにした。これらの結果から、FBXL3とFBXL21による拮抗的な作用は概日時計が安定な振動を維持するのに必須であると結論づけた。本研究成果を筆頭著者としてまとめ、Cell誌に受理された。
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Cell
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