研究概要 |
チョーク現象を利用して質量流量を測定する装置に臨界流量計がある.臨界流量計は2003年に国際規格や国内規格が制定され,最近では半導体産業などの分野において臨界流量計を用いた微小流量の測定が検討されている。しかるに,ノズル直径を極めて小さくすると境界層の影響が無視できなくなるが,これに関してはこれまでほとんど研究されていない.ゆえに,本研究はチョーク現象に及ぼす境界層の影響を解明することを目的とし,圧縮性や粘性及び希薄気体効果を考慮に入れた解析的研究を行う. 本研究では大気吸込み式風胴を用いて測定を行った.測定にはノズル幅36mm,長さ100mm,高さ5mmの直管を取り付けた矩形先細ノズルを用いた.ノズル上流には熱式質量流量計を設置して質量流量の測定を行った。また,圧力・流量測定と同時にシュリーレン法を用いて流れ場の可視化を行った. 流れがチョークした後のシュリーレン可視化結果から,ノズル出口近傍でマッハ波が確認でき流れが超音速であることが分った.マッハ波より算出したマッハ数と壁面静圧測定より求めたマッハ数の比較検討した結果,ノズル出口より4mm上流の位置において約5%の誤差があった.この誤差は,壁面静圧は断面にわたって一定であると仮定して解析していることが原因であると考えられる.次に,管内の境界層排除厚さの分布を求めた.その結果,境界層排除厚さはノズル出口よりも上流で最も厚く,その後ノズル出口に向かって減少している.ゆえに,境界層排除厚さが最大となる位置で流れは音速となり,その後は流路が増加することで流れが超音速となることが分った. これらの研究成果を基に国内外のシンポジウムや学会等で口頭発表を行った.また,研究全体をとりまとめ学位論文を完成させ,臨界流量計に関する現在の国際規格及び国内規格を微小流量に適用できるよう成果をまとめ基礎資料の作成を行った.
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