研究概要 |
本研究では,我々が提案しているセミクローズド・システムによる単一細胞解析システムの構築を最終目的としている.今年度前半は,アメリカカリフォルニア大学ロサンゼルス校においてOptoelectronic Reconfigurable Microchanne1(OERM)を用いたマイクロポンプの作製を行った.OERMは光電子効果を用いて光を照射した部分にのみ局所的にジュール熱を発生させることができるデバイスである.凍らせた溶液をこのジュール熱によって溶かすことにより,光のパターンに応じて再構成可能なマイクロチャネルのパターンを作り出すことができる.この固液相変化時に発生する体積変化を用いることでポンピング圧力を発生させることに成功し,シリンジポンプ等外部のアクチュエータを用いることなくマイクロチャネル内の溶液を駆動させることを実現した. 今年度後半は,名古屋大学において生体外での3次元細胞構造の作製に関する研究を行った.近年のES細胞やiPS細胞の発見に伴い,再生医療が大きな注目を集めている.しかしながら,生体外で作製できる組織は現在のところ細胞シートや直径200ミクロン以下の細胞塊がほとんどであり,まだ生体内組織との差は大きい.そこで,本研究ではセミクローズド・システム内で実現できる新たな3次元細胞構造の作製方法として感熱応答性ポリマー溶液のヒステリシス特性に着目をした.これは,感熱応答性ポリマー溶液が一度ゲル化すると温度が下がってもゾルに戻りにくいという特性である.この特性を用いることで,感熱応答性ゲルの構造物をマイクロヒータが切られた後も保持できるようになる.実験により感熱応答性ゲルシートの3次元組立に成功し,本提案手法が3次元細胞構造作製において有用であることを示した. これまでの研究成果は学術雑誌としてJournal of Micro-Bio Robotics(vol.8,pp.53-64)及び日本ロボット学会誌(vol.31,pp.275-282)に掲載され,国際会議IEEE International Symposium on Micro-Nano Mechatronics and Human Science(MHS2012),国内学会日本ロボット学会第30回記念学術講演会において発表し,公表に努めた.
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