研究課題/領域番号 |
10J08932
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
無機化学
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塚田 学 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員DC2
|
研究期間 (年度) |
2010 – 2012
|
研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
|
配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
|
キーワード | 金属クラスター錯体 / メタラジチオレン / 金属-金属結合 / 分子内金属間相互作用 / 環状三核錯体 / 異種金属多核錯体 / 9族金属 / 6族金属 / 9族金属錯体 / 精密合成 / トリフェニレン |
研究概要 |
本研究は、金属クラスター錯体の合成において特異な性質を有する金属錯体を構成要素として組み合わせるという手法で、金属クラスター錯体の構造および分子内の金属原子の配置を制御することが目的である。IrCo_2三核クラスター錯体の合成法(Inorg. Chem. 2006, 45,14.)を応用し、構成要素とする環状Ir三核ジチオレン錯体上にCo原子を精密配置する検討を行ったところ、Ir_3Co_69核クラスター錯体を収率8.9%で得た。同定は各種スペクトル測定およびX線結晶構造解析で行った。X線結晶構造解析の結果、コバルトユニット([Co_2(CO)_5])が一カ所だけ反対側から反応した[syn, syn, anti]の構造をしていた。9核クラスター錯体は期待していたとおり三つのジチオレン環と中心のベンゼン環が高い平面性を有していた。電気化学測定より2段階の混合原子価状態が観測されたことから、還元状態においてコバルトユニット間に強い分子内金属間相互作用があることを見出した。Co_3Fe_3 6核クラスター錯体と分子内金属間相互作用について比較すると、6核クラスター錯体のジチオレン環が平面性を失っているのに対し、9核クラスター錯体は中心骨格が高い平面性を保持しているため分子内金属間相互作用が強くなっている。以上のことから、金属クラスター錯体の合成において特異な性質を有する金属錯体を構成要素として用い、金属クラスター錯体の構造および分子内の金属原子の配置制御に成功した。ここまでの検討から、中心のπ共役をさらに広げれば、さらに長距離の分子内金属間相互作用を発現できると考えた。そこで、トリフェニレンヘキサチオールを新規配位子として合成し、9族金属の二次元集積化により3種類のπ共役環状三核錯体を合成した。結晶構造解析の結果、ボウル状に多少歪んでいるが、高い平面性を有していた。3種類のトリフェニレン錯体の分子内金属間相互作用は、中心骨格がベンゼンヘキサチオールのπ共役環状三核錯体に比べ弱くなっているものの、分子内金属間相互作用があることが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内部空間を有するメタラジチオレン錯体の単離には至っていないものの、Ir_3Co_69核クラスター錯体の合成は金属クラスター錯体の合成において特異な性質を有する金属錯体を構成要素として用い、金属クラスター錯体の構造および分子内の金属原子の配置制御に成功したと言える。また、9核クラスター錯体の構造解析成功や、構造に伴う強い分子内金属間相互作用の発見は、非常に興味深い結果である。
|
今後の研究の推進方策 |
3種類のトリフェニレン錯体において分子内金属間相互作用があることが明らかになったため、9核クラスター錯体の合成検討を行う。すでに数回検討しており得られた化合物のESI-TOF-MSを測定したところ、トリフェニレン錯体上に三つのコバルトユニットが付加したものと一致する分子量が観測された。IRスペクトルにおいて、カルボニル基の吸収が観測されたことから、得られた化合物はトリフェニレン錯体上にコバルトユニットが三つ付加した9核クラスター錯体であると考えられる。ジチオレン環と中心骨格が平面性を保っていると考えられ、分子内金属間相互作用があることが期待される。今後は電気化学測定により、分子内金属間相互作用を測定する。
|