研究課題
特別研究員奨励費
オンチップ光配線の実現に向けた小型・極低消費電力光源として期待される強光閉じ込め効果を用いた極低電流動作半導体薄膜DFBレーザの実現および高速動作化を目的としている。オンチップ光配線用光源に求められる動作特性には、1mW以下の極低消費電力動作に加えチップ内で信号を伝送する上で十分な光出力強度と直接変調帯域が要求される。本年度はまず、これらの要求値を満たす半導体薄膜レーザの実現に向け、理論計算による半導体薄膜レーザの発振特性と高速変調特性の検討と構造設計を行った。その結果、コア層150nm共振器長約40μmの微細共振器を有する半導体薄膜レーザにおいて、0.16mW以上の十分な光出力強度と10Gb/s以上の直接信号伝送帯域を駆動電力1mW以下で実現可能であることを示した。これらの動作特性はオンチップ光配線への応用に向けてその要求値を十分に満たす。また、半導体薄膜レーザなどの微細共振器を有する光デバイスでは、熱伝導率の低い低屈折率材料をクラッド層を有することや微細化に伴う素子抵抗の増大などによって、電流注入駆動による発熱の影響が懸念される。この問題に対し、電流注入による自己発熱の影響を理論的に解析し動作特性への影響を評価した。その結果、半導体薄膜レーザの熱抵抗値を約6100K/Wと試算し、発熱の影響を考慮した半導体薄膜レーザの動作特性解析においても、オンチップ光配線の要求を十分満たす事を示した。これらの動作特性解析および熱特性解析を踏まえ半導体薄膜レーザの素子試作を行った。理論解析から予想された自己発熱の影響を低減するために熱伝導率の低いBCBの厚さを従来の6μmから2μmに薄膜化し、放熱特性の向上を図った。コア層厚220nm、共振器長700μmの半導体薄膜レーザを試作した結果、しきい値電流値3.5mAの室温連続動作に初めて成功した。比較的大きい共振器サイズにおいて艇しきい値動作化に成功したことから、回折格子等を導入し共振器の結合係数を増大させるとともに50陣以下の微細共振器化を進めることでオンチップ光配線に向けた極艇消費電力レーザの実現が十分可能であると考えられる。
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