研究課題/領域番号 |
10J09017
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
進化生物学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
守山 裕大 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 脊柱後端部 / 尾部骨格 / 形態進化 / メダカ / zic / 脊椎後端部 |
研究概要 |
脊柱後端部の形態は脊椎動物の進化の過程においてダイナミックに変化しており、脊椎動物の進化を理解する上で非常に重要な形質である。特に真骨魚類では脊柱後端部が背側に屈曲することで尾鰭の機動性を上げ、水中での生活に適応していると考えられている。しかし、どのようにして脊柱後端部が屈曲するか、その発生過程における形態形成の分子メカニズムは解明されていなかった。そこで、本研究では脊柱後端部が背側に屈曲せず、尾部骨格の形態が変化するメダカ自然突然変異体Double anal fin(Da)を手掛かりとして脊柱後端部における形態形成、形態進化の分子メカニズムを解明することを目的とした。今年度の主な成果は以下の二点である。1.尾部骨格を形成する組織"Caudal skeleton forming mesenchyme(CSM)"の同定:メダカ胚の発生過程を詳細に観察した結果、尾部の屈曲に先立って後方体節が融合し、組織が変化していることを発見した。この組織は硬節細胞に富む、特殊な組織構造となっていた。発生が進むとこの領域から尾部骨格が形成されることから、この領域を"Caudal skeleton forming mesenchyme(CSM)"と名付けた。Daの原因遺伝子であるzic1/zic4を調べたところ、背側CSMで強く発現していることが明らかとなった。DaではCSMは形成されるものの、zic1/zic4の背側CSMにおける発現は消失していた。以上から、zic1/zic4の背側CSMでの発現が尾部の屈曲を制御していることが示唆された。2.他の脊椎動物種におけるCSMの形成とzic1/zic4発現パターンの解析:メダカと同様に真骨魚類で脊柱後端部が背側に屈曲するゼブラフィッシュではCSMが形成されzic1/zic4が背側CSMで強く発現していること、最も古くに分岐した条鰭類であり脊柱後端部が屈曲しないポリプテルスではCSMは形成されず、zic1/zic4の尾部末端背側における強い発現もみられなかった。以上から、脊椎動物の進化の過程の真骨魚類に至る系統において、尾部骨格を形成する特殊な組織CSMの獲得とzic1/zic4の背側CSMへのco-optionによって脊柱後端部が屈曲する尾部骨格が獲得されたということが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画、目標を達成し、論文にまとめることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の展望としては、zic1/zic4のCSMエンハンサーの同定が挙げられる。zic1/zic4のCSMエンハンサーを同定し、各種脊椎動物における相同領域の配列を比較することで、脊柱後端部に関するゲノム進化と表現型進化を結び付けることが可能となる。また、サメなどの軟骨魚類における尾部の発生、zic1/zic4の発現パターンとその調節領域を調べることで、脊椎動物だけでなく顎口類の尾部形態の進化を考察することができる。
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