研究課題/領域番号 |
10J09068
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(理論)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
酒井 志朗 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2011年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2010年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 銅酸化物高温超伝導体 / 擬ギャップ / 非フェルミ液体 / 動的平均場法 / 量子モンテカルロ法 / 制限乱雑位相近似 / グリーン関数の零点 / 強相関電子系 / フェルミアーク / 角度分解光電子分光 / 動的平均場理論 |
研究概要 |
銅酸化物高温超伝導体の擬ギャップ状態の特徴の一つは、電子の自己エネルギーが強い波数依存性を持つことである。その結果として、フェルミアークのような異常なスペクトル構造が現れると考えられている。自己エネルギーの強い波数依存性を理論に取り入れるには、一般に大自由度を扱う必要がある。しかし、自由度が増すほど計算は困難になる。 そこで、昨年度までのクラスター動的平均場法による計算では最小限の自由度(4サイト)の系から、熱力学極限の結果を上手く抽出するような方法を取っていた。しかし、その近似の妥当性は、それより大きな系の比較対象となる結果がないために不明確であった。今年度は、連続時間量子モンテカルロ法を用いた大規模並列計算により、上記の方法を拡張し16サイトまでの計算を行った。その結果は、4サイトで得られた結果を支持するものであった。また、熱力学極限の結果を推定するのに最も効率の良い方法を、詳細な解析により結論付けた。この結果は、今後のクラスター動的平均場法による電子相関効果の研究の土台となる成果である。 更に、16サイトクラスターの結果から、ラマン分光スペクトルや光学伝導度を計算するプログラムの開発を行った。これらは銅酸化物について実験的に詳しく調べられており、擬ギャップ状態において特徴的な振る舞いを示すことが知られている。これらの実験結果は、(これまでの研究で理論との比較対象として注目してきた)角度分解光電子法では捉えられないエネルギー領域のスペクトル構造及び電子グリーン関数の零点構造を反映しており、興味深い。 また、現実物質の原子配置から出発して、上記のような理論計算が適用可能な有効模型を導出する試みの一環として、制限乱雑位相近似の適用範囲についての考察及び高エネルギーバンドからの自己エネルギー効果の計算を行った。これは、実験結果と上記の理論計算を比較するうえでの基礎的土台となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後クラスター動的平均場法による計算を展開していく上での土台となる結果が得られ、それを論文にまとめられた。また、銅酸化物の様々な物理量を計算するプログラムの開発が終わり、結果が出始めている。
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今後の研究の推進方策 |
2次元ハバード模型の異常金属状態においてラマン分光スペクトルや光学伝導度の計算を行い、銅酸化物の擬ギャップ状態の実験結果と比較する。その比較を通して擬ギャップの形成機構について考察する。 クラスター動的平均場+連続時間量子モンテカルロ法を周期アンダーソン模型に拡張し、f電子系の非フェルミ液体状態についての計算を行う。 また、制限乱雑位相近似の適用範囲及び、高エネルギーバンドが生む自己エネルギー効果について、系統的な計算を行い、成果を論文にまとめる。
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