研究課題/領域番号 |
10J09161
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
金属物性
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
石井 顕人 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | バルク金属ガラス / 陽電子消滅測定 / 熱処理 / EXAFS / 自由体積 / 構造緩和 / 局所構造 / ジルコニウム |
研究概要 |
優れた特性を有するZr-Cu-Al3元系バルク金属ガラスは広い組成範囲でバルク材が作製可能である。近年加熱過程による構造緩和により機械的特性が変化し且つ、組成依存性を有する事が報告されているが、これらの性質の違いの要因は解明されておらず、その一つに内部構造の差異等が考えられている。よってZr-Cu-Alバルク金属ガラスの加熱焼鈍過程における自由体積及び局所構造変化について、主に陽電子およびEXAFSの結果に基づいて考察した。はじめに、全ての合金組成において焼鈍による密度の上昇、すなわち構造緩和を確認した。この条件の下で、それぞれのバルク金属ガラスを構造緩和させた。その結果、Zr_xCu_<90-x>Al_<10>(x=45~55)の組成範囲においては密度上昇に対応した自由体積サイズの減少が確認されたが、Zr_xCu_<90-x>Al_<10>(x=60,65)については、密度の上昇にも関わらず陽電子寿命は変化しなかった。一方、緩和前後のCDB測定の結果からは、自由体積周囲に存在する局所構造の元素比率に顕著な変化は観測されなかった。以上の結果から、緩和過程において自由体積サイズの変化の有無に関わらず、その周囲の原子の拡散および再配列は起こらない事が示された。さらに、EXAFS測定結果より、Cu-Zr結合の割合はZr_<45>Cu_<45>Al_<10>組成以外では増加した。これらより、Zr_xCu_<90-x>Al_<10>(x=50,55)では自由体積の収縮とそれに関与しないCu-Zrの結合割合の変化が緩和に寄与し、Zr組成が多くなると自由体積は収縮せずに別の領域でのCu-Zrの結合の割合の変化が緩和に大きく寄与している事を突き止めた。このように、Zr-Cu-AIバルク金属ガラスの緩和過程においては、自由体積の緩和のみではなく、それ以外の領域を含む、組成に依存した複合的な緩和機構が存在する事を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるZr-Cu-Alバルク金属ガラスの構造緩和における組成依存性の解明に関して、自由体積変化とそれに関連する局所構造変化の相補的な評価により、より詳細な緩和機構のモデルを提案するに至った事による。
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今後の研究の推進方策 |
陽電子消滅法により自由体積を直接捉え、自由体積周囲の特徴的な元素分布を評価することができたが、実際の元素比率や、自由体積サイズとその分布の定量的な評価は未だなされていない。これらを明らかにするためには、複数の局所構造のモデルをシミュレートし、陽電子消滅の計算を行うことで、定量的評価が可能であると考えられる。
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