研究課題/領域番号 |
10J09347
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
環境影響評価・環境政策
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
内井 喜美子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2011年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2010年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | コイヘルペスウイルス / 新興感染症 / 生物学的侵入 / 競合 / 生息地利用 / 安定同位体比 / 宿主間伝播 / 新興病原生物 / 野生生物感染症 / 潜伏感染 / 新與病原生物 |
研究概要 |
本研究課題は、コイヘルペスウイルス感染症をモデルシステムとし、野生生物新興感染症の感染ダイナミクスと宿主個体群への影響の解明を目指すものである。本年度は、新興感染症が宿主個体群へ与える影響の中でも、とくに新興感染症と生物学的侵入の相互作用によって生じる影響について明らかにした。 前年度までの研究より、コイヘルペスウイルス侵入後、琵琶湖コイ個体群において、日本在来系統コイ由来のミトコンドリアDNAハプロタイプ頻度が減少したことが明らかとなった。この結果は、コイヘルペスウイルス耐性が低い在来系統コイが選択的に排除された結果、外来系統コイの侵入が急速に進行した可能性を示唆した。しかし、在来系統と外来系統の生態学的差異がほとんど分かっていないため、競合やコイヘルペスウイルス発生による在来系統コイ個体群への影響の将来予測は非常に困難であった。そこで、琵琶湖で捕獲したコイについて、核DNA分析による遺伝子型の判定と、炭素および窒素安定同位体比分析による生息地利用の推定を行い、コイの遺伝子型に応じた生息地利用の違いを評価した。すると、在来系統は主に琵琶湖本湖を利用するのに対し、外来系統は主に内湖・河川を利用する傾向が認められ、両者は異なる生息地を利用していることが明らかとなった。一方で、交雑個体は本湖と内湖・河川をどちらも利用しており、在来系統と外来系統にまたがる生息地利用パターンを持つことが分かった。つまり、在来系統と交雑個体の間には生息地を巡る競合があるため、在来系統に比べコイヘルペスウイルス耐性が強いと考えられる交雑個体により、将来、在来系統が置き換わられてしまう危険性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未解明の部分が多かった野生生物における新興感染症のダイナミクスと宿主個体群への影響を明らかにするため、研究を行った。コイヘルペスウイルス感染症をモデルシステムとして用いることで、3年の研究期間の内に、宿主繁殖生態を利用した病原生物の伝播メカニズムから、新興感染症が宿主個体群の遺伝的構造へ与える影響までを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題により、野生コイ個体群におけるコイヘルペスウイルスの季節的な感染動態や、ウイルス侵入後のコイ個体群の遺伝的構造変化に関する知見が蓄積された。従って、今後、コイヘルペスウイルス感染症をモデルシステムとし、野生生物新興感染症の長期的な疫学研究や、宿主一病原生物の相互作用を通した進化プロセス研究が発展することが期待される。
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