研究概要 |
今年度の本研究の目標は、昨年度までに得られた知見を活かし、ヘテロ接合およびパッシベーション膜により再結合を極限まで抑制した太陽電池を作製し、薄型のシリコン基板において高開放電圧および高効率を有する太陽電池を作製する事である。表面にナノ結晶立方晶シリコンカーバイドをヘテロ接合エミッタとして、裏面にAl_2O_3をパッシベーション膜として用いたポイントコンタクト型太陽電池を作製したところ、開放電圧650mV,短絡電流密度37.6mA/cm^2,曲線因子0.684,変換効率16.7%であった。この太陽電池において、Alにレーザーを用いて局所的に熱を加えて裏面のコンタクトを形成し、開口部の再設計、および再結合抑制を試みた所、開放電圧が665mVに改善した。 現状では、裏面のAl_2O_3のパッシベーション効果を高めるための400℃程度の熱処理がヘテロ接合エミッタと透明導電膜の特性を劣化させてしまっており、開放電圧を665mV程度に、また短絡電流密度と曲線因子の両立を制限してしまっている。裏面にa-SiO:Hをパッシベーション膜として用いた太陽電池においては、開放電圧676mV、変換効率20.0%を達成している。これは、必要温度が225℃以下と低いので、ヘテロ接合エミッタと透明導電膜が劣化していないためである。 また、表面のヘテロ接合エミッタ作製時のプラズマ電力密度、水素希釈比、および基板温度を制御する事により、凹凸基板上でも高いパッシベーション効果が得られるようになり、開放電圧720mV相当の高いライフタイムが得られるようになった。コンタクト形成時に開放電圧が40mV以上低下している事から、レーザーを用いていてもなおコンタクト形成部の再結合が太陽電池の開放電圧を制限している事が分かる。 以上のように、本研究の太陽電池は、P型シリコン基板において開放電圧700mV以上、変換効率20%以上を薄型基板において達成しうる要素技術を含んでおり、今後のシリコン太陽電池の発展に有用であると考えられる。
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