研究概要 |
従来の結晶金属に比べて,優れた物理的・化学的性質を有するZr基金属ガラスについて,作製条件による緩和状態の比較,アニールによる変化,結晶化に伴い,熱力学的性質がどのように変化するのかを詳細に調べた.水素吸蔵合金として注目されているZr系金属ガラスの熱容量測定を行い,水素吸蔵の有無が熱容量におよぼす影響について調べた.Ni_0.36Nb_0.24Zr_0.40の熱容量を緩和法で測定したところ,室温以下での熱容量の絶対値は水素吸蔵により減少することから,このガラス中では吸蔵された水素が周囲の結合力を変化させ,原子振動が固くなっているのではないかと考えられた.一方,2.3Kに超伝導転移による熱容量ジャンプが観測された.またこの合金に対して10%水素を吸蔵させた合金でも同じく超伝導転移が観測されたが,転移温度は2.1Kと低くなった.また,水素吸蔵体では超伝導相転移による熱容量ジャンプが小さくなり,試料中に不均一構造が導入されたのではないかと考えられた.水素吸蔵金属ガラスの母合金である,Ni-Nb-Zr系金属ガラスの低温熱容量測定を行い,熱容量の組成依存性を調べた.Ni_0.54Nb_0.36Zr_0.10の熱容量との差を計算すると,たがいに類似したショットキー型熱容量の形になった.ピーク位置が変化せず,高さのみが変化したことからNi由来の比較的高振動数の振動モードがZr由来の低振動のモードに変化したためと考えられた.また,Ni,Nb,Zr単体結晶の加算した熱容量と今回のガラスの熱容量とを比較すると,50K付近にこぶを持つ過剰熱容量があり,そのピーク温度は組成によって変化しないことからガラス化に起因する過剰分であると考えられた.その過剰熱容量の組成依存性から,x=0.40の試料がガラスの過剰性から来る振動モードの数が最も多いことが示され,この結果はガラスの安定性の組成変化と相関することを見だした.
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