研究課題/領域番号 |
10J09773
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
東洋史
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
居阪 僚子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
800千円 (直接経費: 800千円)
2011年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
2010年度: 400千円 (直接経費: 400千円)
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キーワード | 古代史 / 中世史 / 民族誌 / ロシア / 考古学 / 騎馬遊牧民 / 国際情報交換 / ロシア:ウクライナ |
研究概要 |
本年度前半期はロシア連邦に長期滞在し、調査・研究活動を行った。まず、モスクワやサンクトペテルブルクの図書館において資料収集を行った。本年度は特にオセチアの精神文化について注目して資料を集めた。さらに、ロシア連邦北オセチア共和国を訪問し、地域博物館や北オセチア国立大学で考古学遺物を実見する一方で共和国内に点在するオセット人の「聖域」をまわって調査した。この「聖域」はオセット人がキリスト教(正教)と同時に信仰している土着的信仰の神々にまつわるもので、この土着の神々に対する信仰にはイラン系騎馬遊牧民の精神文化の影響があると考えられる。また、ロストフ・ナ・ドヌーにて、スキタイやサルマタイの遺物を多く所蔵するロストフ・ナ・ドヌー地域博物館、アゾフ博物館、タナイス博物館で実見を行った。続いて、7月下旬から9月上旬にかけて北オセチア、ディゴル渓谷に位置するサウアル遺跡発掘調査に参加した。サウアル遺跡は紀元前5-4世紀頃のカフカースの定住民文化であるコバン文化の遺跡で、スキタイがカフカースを通過した痕跡なども発見されている。発掘調査の一方でディゴル渓谷に存在するワストゥルジに関係する洞窟やニッコラの洞窟といった「聖域」の調査も行った。これらの「聖域」や神々に関しては平成24年1月に行われた比較神話学シンポジウムで発表し、その後論文としてこのシンポジウムの報告書に掲載された。 また、昨年度から取り組んでいるアランのキリスト教改宗問題について、古代・東方キリスト教研究会で発表することができた。史料からコンスタンティノープル総主教がアランへの布教の音頭を取っていたことが判明した。 平成24年2月には再度モスクワへ赴き、国立図書館と国立歴史図書館、考古学研究所で資料収集を行った。ナルト叙事詩のヴァリアントを収集し、19世紀末のロシア人が記録したオセチアの習俗及びカフカースにおけるロシア正教会の活動についても調査した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二度にわたる北オセチア共称国における調査が期待以上に順調に進み、予定していなかった「聖域」の調査も行えた。その結果、19-20世紀の報告と合わせてより具体的に現代に伝わる騎馬遊牧民の精神文化について明らかにすることが可能となった。また、各都市の研究者の協力により予定より多くの考古学資料を実見することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、考古学資料と民族誌資料を利用してイラン系騎馬遊牧民の精神文化を明らかにしていく。特に、キリスト教(正教)及びイスラーム教を受容した現代でも維持されている多神教的信仰に注目して研究を進める。古典史料からアラン族(オセット人)が最初にキリスト教を受容したのは6世紀と分かっているが、その後の北カフカース地域におけるキリスト教の盛衰の状況を鑑みて検討する。中世のアラン-オセットに関しては史料が少ないが、グルジア語史料及びアルメニア語史料を利用することで、史料の不足を補う。
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