研究概要 |
【イギリスでのフィールドワーク調査】 8月末から10月半ばまでオクスフォード、ロンドン及び北部イングランドにてタブリーギー・ジャマーアトの女性信者を対象にフィールドワーク調査を行った。今回の調査は、可能な限り多くのコンタクトを作り.タリームと呼ばれる経典の勉強会に参加することで、人々のウンマ意識の形成過程を調べることを目的とした。主に、マレーシアからのジャマーアトと呼ばれる布教グループとともにイングランド各地を回った。それぞれの地域において、様々なバックグラウンドを持つ人々がどのように人間関係を築いているのかを観察することに専念した。この運動のヨーロッパ支部が存在するデューズベリーにおいて他の女性ジャマーアトとともにモスクの離れで宿泊をし、勉強会にも参加した。そしてこの地区にあるイスラーム専門の書店において、この運動の経典やムスリム女性への教えについて書かれた書物を購入した。調査をして分かったことは、女性信者が「ウンマ」を必ずしもムスリムだけの共同体とは思っていなかったことである。彼女たちにとって「ウンマ」は、預言者ムハンマドの誕生以降の非ムスリム信者をも含めた全世界を指していた。信者同士では、「アッラーに基づく愛」が共有されているが,彼女たちの祈りはムスリムの共同体を超えた全世界にも向けられているということであった。イギリス政府の政策文書が認識するイスラーム共同体としての「ウンマ」とタブリーギー・ジャマーアトの女性信者の世界観も異なっていることが分かった。調査でわかったことは、東京大学駒場キャンパスで行われたUTCP Graduate Conferenceにて今年三月に発表した。 今後の調査では、さらに女性信者との交流を深め、彼女たちにとって信仰とは何かということを調査する予定である。信仰について知るために、経典の教えを読み直す必要性もある。そして,イギリス政府の政策文書における「共同体」、特に"community"の概念の歴史的変遷の整理を行うことをもう一つの目的とする予定である。
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