研究概要 |
平成23年度に行ったサバ語の統語的派生についての研究を敷術し,24年度には,同じく派生形態法により実現する文法カテゴリであるサバ語の態について使役と受動を中心に調査分析を行った.類型的に珍しい2つの構文(二重対格使役文と非人称受動文の成立条件を明らかにし,合わせて言語の系統関係・地理的分布・歴史的変遷の観点からの考察を行った.このテーマについて3つの場所で口頭発表を行った:1日本言語学会第144回大会(2012年6月),2国立国語研究所他動性プロジェクト(2012年6月,京都大学),3共同研究プロジェクト「北方諸言語の類型論的比較研究」の国際シンポジウム"Linguistic Documentation and Description of the North"(2012年12月,東京外国語大学,受入研究者である呉人徳司准教授を研究代表者とする). 日本言語学会第144回大会(2012年6月)においては,上記の使役と受動に関する研究発表に加えて,「東アジア接尾辞型諸言語における動詞屈折形式:分詞に関する問題を中心に」と題するワークショップのメンバーとして司会および発表を行った.続く第145回大会においては,「サバ語(ヤクート語)の勧誘形における「双数」の解釈」 と題する口頭発表を行った.第16回国際チュルク諸語会議(2012年9月,トルコ・アンカラ)においても2件の口頭発表を行った.これらの研究成果を査読誌に投稿した結果,平成24年度中に5本の論文が掲載されるに至った. 2012年5月に『サバ語名詞類の研究-接辞法と統語機能を中心に-』と題する博士論文を東京大学大学院に提出した.6月に行われた口頭試問に合格し,7月に博士号が授与された.この博士論文の内容の大部分は,特別研究員としての研究期間中にまとめたものである.
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