研究課題/領域番号 |
10J10660
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
文化人類学・民俗学
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
丹羽 充 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2010 – 2011
|
研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
|
配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
|
キーワード | 国際研究者交流 / 文化人類学 / 民族誌 / ネパール / プロテスタント / 宗教 / 宗教間対話 / カトマンドゥ / キリスト教 / 信じる / ビシュワス |
研究概要 |
ネパールでは、プロテスタントの布教が進む一方で、マジョリティであるヒンドゥや仏教徒によるプロテスタントへの批判や蔑視が依然として根強い。本研究の目的は、プロテスタントに向けられる批判や蔑視の内実およびその背後にある論理について、それからそうした批判や蔑視に対してプロテスタントがどのように対峙してきたのかということについて探求することであった。 まず調査から明らかとなったのは、プロテスタントに向けられる「宗教の名の下に何らかの利得を期待している」といった批判や侮蔑が「信仰」の違いに起因していることである。つまり、キリスト教では「信仰」に該当する言葉として「ビシュワスbiswaas」という概念が用いられるが、これはヒンドゥや仏教においては用いられないキリスト教に固有のものである。そしてこの概念は、もともとそのうちに利益の期待を内包している。つまりプロテスタントが何らかの利益を志向して「信仰」することは当然のことであり、この「信仰」を巡る違いがプロテスタントに対する批判や蔑視の原因となっているのである。 しかしさらなる調査からは、プロテスタントの間でも「信仰」が多様化しており、それに伴ってプロテスタント共同体内部での対立が発生しつつあることが明らかとなった。またプロテスタントたちは抑圧に対処し自らの権利や地位を向上させるために複数の超教会団体をこれまでに組織してきたが、これもプロテスタント共同体内部での新たな対立を引き起こすようになっている。すなわち複数の超教会団体が主導権を巡る争いを繰り広げ、それがプロテスタント共同体に相互不信や葛藤を引き起こすというアイロニカルな状況が立ち上がりつつあるのである。 本研究は、人類学や宗教学を超えて、宗教紛争といった人々の争いについて理解する際に、貴重な知見を提供し得るだろう。
|