研究概要 |
平成24年度は最終年度であることから、これまでに共同研究として計測した実験データのまとめを行った。その内容としては、実験データの解析と論文執筆作業を中心に行った。また、平成22年度から継続していることとして、健常発達児における情報処理能力の発達に関する基礎データの報告、発達障害や特別支援教育についての情報収集、精神疾患、自閉症関連の機関、施設の視察も行った。 研究成果のうち、英語原著論文として発表されたものは2編である。1つは生理学研究所との共同研究で事象関連電位(event-related potentials; ERP)を用いて行った研究である。6歳から15歳の健常小児の"point-light walker"知覚時の脳機能計測を、同じ被験者を対象に2年に渡って行った結果が報告された(Developmental Cognitive Neuroscience, 2013, Vol.5, pp.51-62)。 もう1編は、愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所、生理学研究所との共同研究で、ERPと脳磁場計測装置(magnetoencephalography; MEG)を用いて、視空間認知能力に障害があるとされる3名のウィリアムス症候群患者の「顔」を知覚している時の脳機能計測を行った研究である。その結果、3名中2名の患者において倒立顔効果の欠損がみられたという結果が発表された(Brain and Development, 2013, Vol.35(4), pp.323-330)。 本研究では当初計画していた自閉症を対象とした実験にまでは着手することはできなかった。しかし、実際に現場と関わることで、臨床応用のために事前に何を調べることが必要で、現状では何が足りていないのかということを明確にすることができた。
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