研究概要 |
生物活性物質の特定位置へのフッ素導入は,生物学的等価体の概念やミミック効果やブロック効果などを期待して,医農薬開発等に汎用される。これまでに脂肪族化合物の水酸基からフルオロ基への変換が数多く報告されてきたが,同様なフェノール性水酸基からフルオロ基への変換はほとんど報告が無い。本研究はフェノール性水酸基からフルオロ基への求核的置換法の開発と[^<18>F]Fラベル化体の調製法の確立を目的とする。著者は平成22年度に電子豊富なカテコール類に求核力の弱いフッ素を求核的に導入する,という一見非常識な変換法を開発した。平成23年度は、研究実施計画に基づき研究を行い、以下の知見を得た。 1.含フッ素架橋ビフェニルの合成 天然には高度に酸素官能基化された架橋ビフェニル化合物が多様に存在し、それらはチューブリン重合阻害などの重要な生物活性を持つため、新薬開発のシード化合物として期待されている。申請者は、カテコール類の酸化的炭素-炭素結合形成反応により得られるα-ヒドロキシジエノン1に求核的フッ素化剤を作用させると、フッ素の導入と転位反応が一挙に進行し、2位がフッ素化された架橋ビフェニル2が得られることを見出した。一方、1から定量的に調製可能な架橋構造を含む4-フェニルカテコールをフッ素化すると、フッ素化は3位で進行し2の位置異性体が得られた。これら一連の方法により、一つの原料からフッ素導入位置の異なる2種類の含フッ素架橋ビフェニルの選択的合成が可能になった。 2.[^<18>F]Fラベル化体の調製法の確立 ^<18>Fの半減期(110分)を考慮して、カテコール類のフッ素導入反応の高速化と簡便な後処理法を検討し、計3時間程度で終了する方法を見出した。今後、[^<18>F]Fラベル化体の調製を推進する。
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