研究課題/領域番号 |
10J10873
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理(理論)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
柳生 慶 富山大学, 理工学教育部, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 拡張ヒッグス模型 / ニュートリノ質量 / 超対称性模型 / 加速器実験 |
研究概要 |
本研究目的に基づき拡張ヒッグス模型に関し:1.超対称なヒッグスセクターのデカップリングの性質、2.加速器実験での模型の区別・検証の可能性、3.新たなTeV領域でのニュートリノ質量を説明する模型の構築、に分けて研究を行った。1.についてはヒッグス2重項場を4個含む超対称模型のヒッグスセクターに注目した。最小超対称標準模型(MSSM)に対して付加的なヒッグスボソンの質量が、LHC実験で直接発見されない程度に大きい場合でも、MSSMに含まれる荷電ヒッグスボソン等の質量がMSSMの予言からずれ得ることを見出した。2.に関して、ヒッグス3重項場を含む拡張ヒッグス模型をLHC実験での検証法について研究した。この模型では、3重項場的なヒッグスボソンとして、複荷電、単荷電、そして中性でかつCP偶およびCP奇のヒッグスボソンが標準模型的なヒッグスボソンに加えて現れる。電弱精密測定の実験データから、3重項ヒッグス場の真空期待値は2重項のそれと比べて非常に小さくなければならないことが要求されるが、その下でこれらのヒッグスボソンの質量スペクトルに特徴的な予言が現れる。これをLHC実験で測定することにより模型の検証および他の拡張ヒッグス模型との区別が可能であると期待される。LHC実験で、横質量および不変質量分布を用いた解析により、3重項場的なヒッグスボソンの質量を再構成することが出来得ることを明らかにした。3.に関しては、ハイパー荷2分の3のアイソスピン2重項スカラー場Φ_<3/2>を含む拡張ヒッグス模型を研究した。Φ_<3/2>は、先行研究ではほとんど扱われてこなかったが、ニュートリノ質量を1ループレベルで導出する模型に応用できることを示した。またΦ_<3/2>を含む拡張ヒッグス模型では、複荷電スカラーボソンH^<++>が予言され、H^<++>を予言する新たな可能性の一つとなり得る。本研究で他の模型から予言されるH^<++>とLHC実験で区別し得ることも明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究目酌は、拡張ヒッグス模型を含むTeV領域の物理でニュートリノ質量、暗黒物質、宇宙のバリオン数非対称性の問題を同時に解決することを目指す模型の現象論研究を行い加速器実験で他の拡張ヒッグス模型の包括的研究と併せて模型を区別することにあった。2年間の研究により、上記の目的に適う模型[Aoki, Kanemura, Seto, Phys. Rev Lett. 102]の理論的な無矛盾性を明らかにし、現在の実験データからの制限を満たすことを示すことができた。それに加え、他の物理的動機のある拡張ヒッグス模型として2重項を2個含む模型、3重項を含む模型さらに超対称なヒッグスセクターの現象論研究をし、各々の模型をLHC実験で区別する方法を具体的に示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在稼働しているLHC実験では、今後さらに新しい実験データが現れることが期待される。特にヒッグスボソンに関しては、現段階でもその発見を示唆する兆候が報告されており、近い将来に発見の確定がなされると思われている。しかしながらその兆候が素粒子標準模型において予言されるヒッグスボソンであるか否かは精密な測定を行わない限り決着はつかないと思われる。したがって今後の研究の推進方策として、様々な標準模型を超える新物理模型のヒッグスセクターの精密な理論計算を行い、標準模型で予言される物理量、例えばヒッグス質量、ヒッグス・ゲージ結合、湯川相互作用、ヒッグス自己結合、と比較してどのようなずれが期待できるのかを研究していくことが考えられる。
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