研究課題
特別研究員奨励費
本研究では「HomerlaがUbe3aの標的基質であり、生後の脳発達期に双方タンパクの量的バランスの恒常性が崩れることによりシナプス機能を阻害し精神遅滞症状を引き起こすのではないか」という仮説をたてている。本研究を開始した2010年に、Homerlaと同じく神経活動依存的に発現誘導される早初期遺伝子arcの遺伝子産物がUbe3aの標的基質であることが、MEGreenbergらのグループによって報告された(Greer PL. et. Al., Cell, 2010;140(5):704-16.)。この報告では、Ube3aもHomerlaと同様に神経活動依存的に発現が上昇しシナプス発達を制御する、と主張されており、本研究に関わる重要性を鑑み、その再現性を検証することにした。生後2週齢まで暗室飼育したマウスを突如蛍光灯下に30分暴露し、その後経時的に大脳皮質視覚野を回収しUbe3a遺伝子発現レベルをリアルタイムRT-PCRにより定量解析した。その結果、コントロールであるHomerla、arcは発現が有意に上昇した一方で、Ube3aの発現レベルに有意な変化は認められなかった。従って、Ube3aは神経活動に非依存的であり、その発現レベルは恒常的に維持制御されていると結論し、上記報告とは異なる見解となった。また、脳組織におけるUbe3aの発現分布を明らかにするために、市販のUbe3a抗体を用いて、生後5週齢の野生型マウス、Ube3aホモKOマウス、母親由来Ube3a欠失ヘテロマウスの脳組織の免疫組織化学染色を行った。Ube3a発現はゲノムインプリンティングにより制御されており神経細胞では母親由来アレルのUbe3aのみが発現している、という概念どおり、野生型マウスのNeuN陽性の細胞ではUbe3aシグナルは高く、それ以外の細胞群ではUbe3aシグナルが検出されなかった。ところが、母親由来Ube3a欠失ヘテロマウスの線条体組織においては、ホモKOマウスとの比較においてUbe3aのシグナルが有意に検出されたことから、線条体神経細胞では父親由来のUbe3aも発現している可能性がある。脳内Ube3a発現動態の詳細に関するこれらの結果は、Ube3aの標的基質となりうる神経可塑性関連分子群の量的バランスの調節を知るうえで重要である。
すべて 2011
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Neurochem Res.
巻: 36(7) 号: 7 ページ: 1241-52
10.1007/s11064-011-0398-1
Neurochem Res
巻: (Epub ahead of print 掲載確定)