研究課題
特別研究員奨励費
本研究は、経鼻免疫による膣粘膜免疫応答誘導・制御の機構を解明し、性感染症に対する経鼻粘膜ワクチン開発基盤形成に貢献することを目的として開始された。すなわち、世界的に罹患率が高く、脳炎などの重篤な症状を引き起こす可能性があり、HIVやヒトパピローマウイルス感染のコファクターである単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)を用いた感染マウスモデルを応用して、経鼻投与された抗原に対する特異的免疫応答が遠隔の粘膜組織である膣粘膜において誘導される現象の分子機構を明らかにすることを目的として行われた。昨年度までの成果と総合して、1)経鼻免疫したHSV-2が鼻腔粘膜上皮細胞内に感染・増殖し、その直下に存在する鼻腔粘膜樹状細胞により補足・処理される2)その後、樹状細胞が頸部リンパ節に移動してそこで未感作CD4T細胞にHSV-2由来抗原を抗原提示する3)その結果誘導されたHSV-2特異的エフェクターCD4T細胞が膣粘膜やその所属リンパ節へ移動する、4)腹腔免疫とは異なり、誘導されたHSV-2特異的エフェクターCD4T細胞が膣粘膜組織に長期間保持され、野生型HSV-2による経膣感染に対して速やかにHSV-2の排除に働く、という、性感染症に対する防御免疫応答を担うエフェクターT細胞誘導機構について重要な細胞生物学的知見が得られた。さらに、HSV-2特異的エフェクターT細胞の膣粘膜局在の細胞分子機構として、ケモカインCCL6/ケモカインレセプターCCR2が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。本研究により、性感染症に対する新規経鼻ワクチン開発の基盤が得られたと考えている。
2: おおむね順調に進展している
HSV2膣粘膜感染症モデルを用いて、経鼻免疫により誘導されるエフェクターT細胞が膣粘膜局所に感染時まで保持されることが防御免疫応答に重要であることが明らかとなった。この膣粘膜局在性HSV2-CD4T細胞は、注射による腹腔免疫では誘導されないことが示され、計画当初は予想していなかった、経鼻免疫ワクチンが注射型ワクチンと比較して有用である細胞分子機構が明らかとなった。また、エフェクターCD4T細胞に発現しているケモカインレセプター-CCR2が膣粘膜指向性分子として膣粘膜局在性保持に重要な役割を担っていることが明らかとなった。計画に従い順調に進んだと考えている。
経鼻免疫により誘導されるHSV2-CD4T細胞のケモカインレセプターCCR2をはじめとした膣粘膜指向性および局在性の分子機構についてさらに詳細に解析する。経鼻免疫により実際に膣粘膜に誘導されるHSV2-CD4T細胞の割合は非常に少ないため、効率的な解析を可能にすると考えられる抗原特異的TCRトランスジェニック(Tg)マウスを用いて今後さらに研究を遂行する予定である。
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