研究課題/領域番号 |
10J55122
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
原子・分子・量子エレクトロニクス
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
秋山 了太 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 磁性半導体 / 磁気ポーラロン / パーコレーション / ゲルマニウム / 小角散乱 / 微粒子 / 磁気抵抗 / コトンネル / 単電子効果 / クーロンブロッケード / トンネル異方性磁気抵抗 / MBE |
研究概要 |
GeにMnをドープしたGe1-xMnxについて、Ge(111)基板上への成長でどのようにMnドープ濃度に対して構造・磁性が依存するかは今まで未解明であった。分子線エピタキシー法によってGe1-xMnx成膜を行い、評価をした結果、Mnのドーピング濃度を高くするにつれ、Mn濃度の高い領域が分散してできることがX線小角散乱法や透過電子顕微鏡観察によって分かった。そのMnリッチ領域は、Mnドーピング濃度を高くするにつれ広がってゆき、それによって膜に構造的不均一性が現れることがわかった。そしてそれが磁性に強く影響を与える事を明らかにした。具体的には、Mnが低濃度領域(~9%)においては磁気ポーラロンがパーコレートすることで強磁性クラスターが大きくなり、やがて相関長が長距離となって10K付近において強磁性転移を起こすことが、磁化測定や伝導測定の理論との良い一致などから示唆された。一方、Mn濃度が14%程度の高濃度になると、Mn原子同士の直接交換相互作用の存在や、高い構造的不均一性によって磁気転移が緩慢になり、75K以下付近から徐々に磁気ポーラロンの核ができ始め、段階的に強磁性転移してゆき、10Kで転移が完了する振舞いを示すことが伝導・磁化測定から分かった。これらは単純な磁気パーコレーションモデルだけでは説明できず、不均一性の高いdisorderな構造を持つ物質で見られる現象で、グリフィス相に類似した振舞いとして興味深い現象である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ge(111)上において均一性の高い磁性半導体を作るのにはどのような条件が必要なのかを探るのが本研究の一つの目的であったが、研究が進につれ不均一性の高い構造ができやすく、均一膜の作製は困難であることが判明した。しかし、不均一膜の示す物性が非常に興味深いもので、伝導測定などから磁気ポーラロンがパーコレーションを引き起こし強磁性を発現していることを明らかにできた点は、計画にない進展部分であった。
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今後の研究の推進方策 |
GeMn磁性半導体の研究の方向としては大きく分けて2つある。一つは基板方位や成長温度、成長フラックス速度などを最適化することによってより均一な作製膜を作ること、もう一つは不均一膜ができる成長条件で成膜し、その物性の探求を行うことである。前者の場合は、Geに対するMnの固溶度が低いことからかなりウィンドウが狭いと考えられる。工夫すべき点があるとすれば、格子定数の大きな面方位を用いて、オフ基板によってテラス構造的に成長してゆくモードを探すことである。後者の場合は、すでにGe(001)基板上で多くの研究があるが、Ge(111)基板上においては未だにどういった成長モードが存在するのかが不明で、従ってその磁性を始めとした物性もよく分かっていないため、研究の余地がある。構造的均一性が磁性にどのような影響を与えるかという点については違う物質系でも共通の依存性が見られる可能性があり、より広い観点からの研究を行いたい。
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