研究課題/領域番号 |
10J56172
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(実験)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中島 正道 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 鉄系超伝導体 / 電子輸送現象 / 光学スペクトル / 電荷ダイナミクス |
研究概要 |
本研究では、BaFe_2As_2とその類縁物質BaTM_2Pn_2の単結晶合成、ドーピング制御を行い、電子輸送現象、光学スペクトルを測定した。本年度の成果は以下の通りである。 (1)正方晶相では、BaFe_2As_2は電気抵抗率も高く悪い金属であるが、類縁物質BaTM_2Pn_2は電気抵抗率も小さく良い金属である。本研究では、BaFe_2As_2とその類縁物質の光学スペクトルを測定し比較することにより、BaFe_2As_2の特殊性を明らかにした。BaFe_2As_2の低エネルギー領域の光学伝導度スペクトルはコヒーレントなドルーデ成分と非常に強い散乱を示すインコヒーレントな成分に分解できるが、ドルーデ成分の割合は非常に小さく、インコヒーレント成分が支配的である。それに対し、類縁物質のスペクトルではドルーデ成分が大きく支配的であり、電気抵抗率が低く、良い金属であることと符合する。 (2)BaFe_2As_2におけるAsのP置換は等原子価置換であり、キャリア数の著しい増減は伴わないと考えられるが、高温域の電気抵抗率はP置換とともに大きく減少する。光学伝導度スペクトルの解析により、P置換は確かに等原子価置換として働いているがコヒーレントなキャリア数を増大させており、これが電気抵抗率の下がる原因であることを突き止めた。 (3)非双晶化したBaFe_2As_2の電気抵抗率、光学スペクトル測定により、磁気・構造秩序相における面内異方性の本質は、直流伝導度(ドルーデ成分)ではなく、有限エネルギー領域に現れる異方的なギャップに起因するものであることが分かった。Coをドープしていくと、電気抵抗率の異方性が増大していく。光学伝導度スペクトルの解析から、ドーピングに伴い有限エネルギー領域の異方性は小さくなるがドルーデ成分が異方的になっており、導入されたCo原子が異方的な強い散乱体となっていることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
BaFe_2As_2を中心とする一連の物質群の単結晶育成、結晶の大型化に成功し、光学スペクトル測定が可能になったことで、鉄系超伝導体の電荷ダイナミクスを系統的に調べるという目的は達成された。さらに、これらの結果を俯瞰的に眺めることにより、鉄系超伝導体の電子状態についての新たな知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
BaFe_2As_2を代表例とする122系と呼ばれる鉄系超伝導体の電子状態は明らかになりつつあるが、これが鉄系超伝導体に広くあてはまるものなめか、それとも122系固有のものなのかははっきりとはしていない。この問題を解決するためには、LiFeAsに代表される111系、LaFeAsOに代表される1111系など、多岐に渡る鉄系超伝導体単結晶試料を育成し、物性測定を行うことが必要である。
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