研究概要 |
今回の研究の目的は、明らかな左右差は認めない両麻痺児に対し、single-boxel MRS (magnetic resonance spectroscopy)に加えN-acetylaspartate(NAA・Cr),creatine(Cr),choline(Cho)に関して引き続きCSIを施行し代謝画像を作成し、視覚空間認知障害の病態解明を行なった。疾患検査対象者は10歳の脳性麻痺児(痙性両麻痺:症例1)および学習障害を有するてんかん児(症例2)であり、両者とも高次機能障害を認めている。CSIは、シーメンス社製1.5ステラMR装置を用い、PRESS sequence,repitition time 2000-1500msec,echo time 144msec,voxel size 10x10x15mmにてCIを施行した。撮像時間は約12分である。コンソール上でNAA,Cr,Choの代謝画像を作成し、併せて各スペクトルの面積を自動解析した。2例の各種高次機能検査結果から推測される脳病変は、両側頭頂葉あるいは劣位半球の右側頭頂葉の障害が推測されたが、MRI,CSI検査では明らかな左右差が検出不能であった。その理由および今後の改善点として以下のことが考えられる。一般臨床機でのCSIの施行が可能となり、従来のsingle voxel法に比してその有用性は計り知れない。撮像時間は約12分であり実用に耐えうると考えられた。しかし空間分解能が不十分であること、脂肪の信号を除去するためにregion of interest(ROI)が深部白質に限られることが、大きな問題点である。今後は、phased array head coilの使用により空間分解能の向上を図り、脳性麻痺児の高次機能障害特に視覚認知や言語発達障害と脳内代謝物の関連を検討予定である。
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