研究概要 |
昨年度までの研究で、日本海大和海盆(水深約2600m)で回収されたGH92-703コアの暗色層に保存された最終氷期の縞状暗色層(ラミナ)が,海洋表層プランクトン遺骸と粘土鉱物などの砕屑物質の繰り返しで構成され,平均堆積速度から計算すると1組の縞が年〜4年周期の変動であることが結論されていた.この大和海盆の堆積記録が局所的な現象か,日本海・日本列島周辺などの広範囲での現象か,を把握するため,本年度は,1)平成11年6月25日から8月3日に行われた工業技術院地質調査所による日本海北部の研究航海GH99で日本海北東部から3本の海底堆積コアを,2)平成11年6月17日から8月14日に行われた国際深海掘削計画第186次航海で三陸沖から2点の海底堆積物コアを得て検討した. 本年度の成果は以下のようにまとめられる. 1,最終氷期の暗色層は,北海道北部から大和海盆まですべてのコアに保存されており,対比が可能である. 2.この暗色層中に,ラミナが保存されている層準は各コア採集地点によって若干異なるが,全体的な変動は,酷似している. 3.ほぼ同層準に保存された各地点のラミナの軟X線画像の濃淡変動を空関スペクトル解析すると,濃淡変動には,約2mmのピークがそれぞれ検出され,堆積速度の差を苦慮しても,各地点で共通性がある. 4.このピークは,海洋表層プランクトン遺骸と粘土鉱物などの砕屑物質からなるラミナ一組に対応する. したがって,これまでの大和海盆でのGH92-703コア1本で研究してきた結果は,日本海中央部から北部まで共通性があり,最終氷期には,海洋表層プランクトンの繁殖と粘土鉱物などの砕屑物質の沈積という年〜4年周期の生物生産変動が日本海で広範囲に存在したと結論される.
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