弥生時代の青銅器関連遺物、すなわち青銅器そのもの、青銅器の模倣品、そして鋳造関連遺物の三者について、実際の現物にあたりながら、同一研究者という固定の視点による総括的な集成と研究を進めた。 まず、青銅器については、武器形品を中心に集成を進め、その資料化を行った。今年度におけるその概数は、実測図化したものだけでも60点以上を数え、実見した資料はこれ以上になる。とりわけ、土佐の神社蔵銅矛や意外と実測図化されていない讃岐の資料、そして久しく顧みられていない対馬の銅剣など、これまで充分資料化の進んでいなかった資料を重点的に、基礎資料の整備を図った。加えて他に、東日本の釧類についても調査を行った。 模倣品については、青銅器の流入時期と大きく関わる、畿内の古手の石製品・木製品について再検討を行い、畿内とまた異なる四国の資料や、東日本のものにまで調査を及ぼした。 鋳造関連遺物についても、近江の資料や朝日遺跡資料を中心に、近畿以東の例の調査を主に行い、その成果として、東日本への青銅器生産技術の展開に関する大系的研究をまとめた(「朝日遺跡の青銅器生産-青銅器生産の東方展開に占める位置-」『朝日遺跡-朝日遺跡新博物館地点の調査-』愛知県埋蔵文化財センター印刷中)。また、平成11年春に出土した、和歌山県堅田遺跡出土ヤリガンナ鋳型及び鋳造関連想定遺物についても調査を行い、弥生時代前期という時期における、和歌山の地における青銅器生産の可能性を確認した。
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