研究課題/領域番号 |
11113101
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研究種目 |
特定領域研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小林 茂 大阪大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30087150)
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研究分担者 |
濱野 真二郎 九州大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (70294915)
服巻 保幸 九州大学, 遺伝情報実験施設, 教授 (90128083)
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研究期間 (年度) |
1999
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研究課題ステータス |
完了 (1999年度)
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配分額 *注記 |
1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
1999年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | マラリア / 南アジア / ネパール / 文化的適応 / 生物学的適応 / αサラセミア / 植民地都市 / hill station |
研究概要 |
ネパールにおけるマラリアに対する文化的・生物学的適応の研究から得られる展望をもとに、南アジアのマラリアに対する適応をレビューすることを目的とし、以下の結果を得た。 1.ネパールにおけるマラリアに対する文化的・生物学的適応の研究 これまでの調査により収集したサンプルを分析したところ、マラリア危険地帯に居住する民族集団(ダヌワール)では高頻度(63%)のα^+サラセミア遺伝子が検出された。これに対し、高所(1200m以上)に居住し、雨期に危険地帯に夜間行くのをさけてきた民族集団(タマン)では5%で、マラリア仮説によく適合する結果が得られた。 2.南アジアのマラリアに対する文化的・生物学的適応のレビュー マラリア危険地帯に居住する少数部族の多くでは、α^+サラセミアが高頻度であることが判明した。他方、インドを植民地としたイギリスは、その軍隊・官僚を熱帯病からまもるため、高地にhill station(療養・レクリエーションをかねたリゾート地)を建設し、19世紀なかごろには雨期のあいだそこに行政機能をうつすにいたる。この高度はほとんどが1200m以上で、ネパールのhill town(18世紀後半以後グルカ王朝が設置した行政・軍事拠点)とよく類似する。当時はマラリアの感染経路は知られていないが、この種の都市建設はマラリアに対する文化的適応として評価できる。 3.南アジアのマラリアに対する文化的・生物学的適応の役割について 1950年代以降のマラリア根絶計画では、上記のような生物学的適応を意識せず、マラリアの症状がでない少数部族には充分な対策がとられなかった。マラリアのresurgenceはこの種の人々から始まった可能性が大きく、彼らにおける高頻度のα^+サラセミア遺伝子が注目される。今後のマラリア対策においても、生物学的適応の意義は大きいと予想され、より広範な調査研究が必要である。
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