研究概要 |
(1)インド農村部の就業構造変化の基底をなす農業構造変化を,インドの全国標本調査(NSS)の上地保有調査結果を用いて,土地所有・土地保有の零細化,家畜飼養の変化と農業の機械化および借地市場の変容の5点から検討し,「緑の革命」と半乾燥地帯の油糧作物増産が人口圧の影響を緩和する一方で,畜産の構造変化と農業の機械化が農業の雇用吸収を減退させていること,借地市場が狹隘化するなかで,大規模借地農が出現しつつあることを明らかにした. (2)第50次雇用失業調査個票データ(約36万人)を用いて,農村部における農家世帯の自家農業従事と農業労働あるいは非農業就業の「多就業」の実態と,非農業雇用の実態を明らかにした.農村部における非農業就業はカースト伝統職・小規模な市販余剰を村の定期市で販売する零細商人から,教員・公務員や医者など専門職にわたる非常に広範な活動である.所得水準も大きな格差をはらんでいる.非農業就業を画一的に捉えることは出来ない.世代間の職業移動・教育水準から,農業労働者がアクセスできる農外雇用機会は建設労務や雑業に限られている.非農業自営は残さ部門仮説が当てはまるようである.これらの知見は特定領域研究「南アジアの変動」第1班研究会(2000年1月)において報告した.なお,同データを用いた農村女性の労働参加の分析については,モデルを構築中である. (3)1973〜95年のインド農業労働賃金(AWI)の男子農業労働賃金および大工賃金の県別・月別データの入力は完了した.これは全国300地点の膨大な賃金データである.データ欠損が多いのでその補正を行い,共和分分析などの手法を用いて市場統合の分析を行っている.農業労働賃金,農業労働者消費者物価指数および農村小売価格は,データ欠損の補正・整理後,研究代表者のホームページで公表する.
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