1990年代に入ってインドは経済自由化政策のもとで急速な経済成長を遂げてきた。しかしながら、一国の総合的な人間開発度を示す人間開発指数(Human Development Index) の世界ランキングにおいては、1990年から1995年にかけてインドは逆に順位を下げてしまった。本研究ではこの背後にある問題を探るため、インド以外の開発途上国を3つのグループに分け、国連開発計画(UNDP)のデータをもとに各グループの生活の質を示す様々な指標を比較した。その結果、インドはその低い所得水準を考慮すると保健・衛生の分野で相対的に進んでいるが、教育とジェンダー開発の分野で遅れをとっていること、1990年代の自由化政策による所得向上にもかかわらずこのもともと遅れている分野でインドは他の諸国にさらに差をつけられてしまったこと、教育水準の低迷の背景には政府教育支出における初等教育部門への配分の問題があることなどが明らかにされた。これらの分析をもとに本研究では、インドは今後政策に優先順位をつけていく必要があることを提言した。
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