研究概要 |
阪神大震災の教訓から,震災時に使用できる耐震性貯水槽の整備が必要であるともに,適正に配置した水利へ消防車が迅速にアクセスできることが重要である。本研究では,北九州市A地区を研究対象とし,まず,街路網形態とそれに起因する消防ホース延長を考慮し,耐震性貯水槽の最適配置モデルを構築すること,次に,阪神大震災での被災事例を踏まえ,街路の防災性を評価する指標を設定して,それに基づいた耐震性貯水槽へのアクセス経路の評価方法を検討すること,そして,最適配置をベースとし,評価指標に基づいた密集市街地の改善策を提案すること,を目的とする。結果として,まず,ミクロな消火活動に着目し,耐震性貯水槽を最適に配置する手法を導き出した。次に,阪神大震災の被災事例から得た4つの評価指標を用いて,最適に配置した耐震性貯水槽へのアクセス経路の評価手法を示した。そして,密集市街地の改善策として,評価指標に基づいた沿道状況の改善方法を提案した。また,震災以後,密集市街地の防災対策を進めることが重要な課題となっているが,通常,防災性能の評価作業は手作業で行われているのが現状である。さらに、本研究では,地震火災の被害軽減策を対象とし,評価作業の効率を引き上げるため,街区・街路単位のデータを用いたエキスパートシステムの構築を目的としており、まず,街区は延焼危険性,街路は水利の使用可能性,消防車のアクセス経路の使用可能性,消防ホース経路の使用可能性に着目して,阪神大震災に関する論文等からシステム化するための知識を収集,整理した。次に,整理した知識ベースを基に,システム構築に必要な指標として,街区については5指標,街路については11指標を街区,街路単位で収集,整理した。続いて,知識ベースに基づき,評価作業を支援するシステムを構築した。また,街区の延焼危険性の評価はAHPを用いた。そして,本システムを北九州市B地区に適用した結果,阪神大震災の被災状況をある程度再現できていることから,システムの有効性を示すことができた。
|