研究概要 |
単核非ヘム鉄カテコールジオキシゲナーゼについては,酵素および構造・機能モデル研究が多く報告されているが,研究の進んでいないマンガンカテコールジオキシゲナーゼについて,モデル錯体による酸素化機能発現を実現し,また,モデル中間錯体がこれまで知られていない電子的・立体的構造をとっていることを明らかにした。 先ず,単核のMn(II)-セミキノン錯体を単離し,結晶構造を明らかにした。この錯体は,セミキノン配位子DTBSQ(di-t-butylbenzosemiquinonate)がマンガンMn(II)に1:1で配位する新規な錯体であるばかりでなく,ラジカルの配位にも係わらずMn(II)の電子状態を保っているということにおいても新しい型の錯体であることが明らかになった。さらに,従来のoctahedral構造とは全く異なり,[Mn(TPA)(DTBSQ)]BPh_4錯体のTPA配位子がtrigonal pyramidal型を形成し,これに対面する形でセミキノンが2座配位で結合している。この錯体の電子状態がMn(II)-SQであってMn(III)-Catでないことは,Mn-O結合距離,IR(ν_<co>),XANES,ESR,磁化率などで明らかになった。 この錯体をエタノール溶液に溶解し,酸素を導入するとintradiol型酸素化開裂による生成物が選択的に得られた。この反応はMn(II)による芳香環の酸素化開裂の最初の例である。
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