研究概要 |
本年度は、まず、マイクロメータ単位の微結晶を核とした発光反応が観測できるペリレンの電気化学発光反応系の構造成長や発光反応機構を解明する目的で、ナノメーター単位の微小電極が集積化した電極表面上で電気化学発光観測を行った。50nm,100nm,1μmの各集積型電極を作製して検討した結果、ラジカル塩の針状結晶析出過程に関しては、結晶の形状等には大きな変化は見られなかった。また、その表面上に酸化還元パルスを与えても電気化学発光現象は観測できなかった。この結果は、特に、バルク層で生成する活性種が発光反応に大きく影響していることを示している。 また、ペリレンダイマーカチオンラジカルを電子受容結晶核とした新しい固体ECL反応系を検討する目的で、結晶成長後に溶液層を別の分子種を含む溶液と置換してパルス電解を行い、電極反応過程の時間変化の違いを検討した。具体的には、ペリレンの酸化結晶核を析出させた後、バルク層の溶液をピレン及び支持電解質を含むアセトニトリル溶液と置換し、その状態で酸化還元パルスによる電解を開始して発光像の時間変化を観測した。その結果、同一のパルスシーケンスで測定を行った場合には、ピレンに置換した方が、格段に速く結晶核の溶出が進行することがわかった。同様に、ジフェニルアントラセン(DPA)の溶液と置換して測定を行った場合には、ピレンの場合と比較して、結晶上での発光は明らかに結晶核周辺で強く観測できた。また、結晶核がピレンとの反応に比べて明らかに長く残存することがわかった。これは、DPAの励起状態を経由する発光反応やDPAの酸化還元による発光反応も溶液層内でかなり併発していることを示している。
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