研究概要 |
水溶液電解プロセスにより金属・合金上に多様な構造組織・組成を持つ酸化物皮膜を形成できるが、合金では一成分を優先的に溶解除去し、安定な酸化物を生成する合金成分の酸化物を選択的に生成させることができる。このとき、活性溶解と合金成分のみの酸化物生成を繰り返すことにより、数μmもの厚さを有するポーラス構造を持つ皮膜を生成できる。これまでに、Fe,Cr,Niの活性態電位とCrの不働態電位とを繰り返し分極する方形波電位パルス法により、Fe-Cr,Ni-Cr系合金にCr酸化物を主体とするポーラス酸化物層を作成できるとを報告した。本研究では光触媒あるいは生体適合性などの表面機能が注目されているTiO_2皮膜をFe基合金表面に生成し、その構造・電気化学的挙動を検討した。イオンビームスパッタ法により生成したFe-22Ti合金を0.1M H_2SO_4水溶溶液中でFe,Tiの活性態電位とTiの不働態電位とを繰り返し分極することによって、Tiのカチオン分率が75%に達する干渉色を示す厚い酸化物皮膜を生成した。さらに、方形波の電位を様々に変化させることにより最適の電気化学的条件を明らかにした。この皮膜は、0.1μm程度の細孔が多数分布するポーラス構造を持っており、極めて大きな表面積を有する。一方、光電気化学応答より、この酸化物膜は3.3eVのバンドギャップを侍ち、通常の酸化過程で生成したTiO_2と同様の光電気化学作用を示すことが明らかとなった。さらに表面積が大きいことより通常の酸化物皮膜よりも大きな見かけの量子効率を示すので、TiO_2微粒子と同様の光誘起触媒としての機能性が期待できる。
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